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英語教師・ばーばらの『高校・中学の英語教師になる方法と教師の英語力の実態について』

      2019/05/07

はじめに

英語を教えることに興味がある人の職業選択の一つに挙げられるのが、高校・中学の英語教師でしょう。そして、そのような人々の多くにとって、教員免許が必携であることもご存知のはず。教員採用試験を受けることも、視野に入ってきます。

しかしながら、その免許を取得するにはどういった手続きが必要なのか、採用試験はどんな内容なのかという、高校・中学の英語教師になる前段階について、より深い理解が必要です。さらに、採用試験に合格し、晴れてその職に就いた後の実態についても、ある程度知っておかなければなりません。

英語教師になるにはどんな免許がいるのか

まずは、教育職員免許状(教員免許)が必要となります。それを取得するには、大学で必要な単位を修得しなければなりません。教員免許取得で求められるのは、英語教育や英語学、英米文学、異文化コミュニケーションといった「教科に関する科目」と教育原理や教育心理、教育行政などの「教職に関する科目」、「教科又は教職に関する科目」です。合計単位数は、取得しようとする教員免許の種類(一種、二種)により異なります。

そして、教員免許取得のためには教育実習も欠かせません。実習には、大学での事前・事後指導に加え、2〜3週間の実地指導までが含まれます。実習先は、教育学部であれば附属学校か近隣市町村の協力校、非教育学部であれば出身中学・高校というのが多いようです。

教員免許取得に必要な科目は、教育学部ではもちろんのこと、文学部や外国語学部などの教育学部以外の学部でも履修可能。しかしながら、もしあなたが非教育学部で教職科目を取りたいという希望があるならば、ぜひ気を付けてほしいことがあります。

まず、教職科目は卒業必須要件の単位数に含まれない場合があること。つまり、授業を余分に取るようになります。さらに、すべての非教育学部が教職科目を開設しているとは限りません。進学・在籍する大学で履修できるかどうか心配ならば、一度教務課などに問い合わせてみてはいかがでしょうか。

英語教師になるにはどんな試験を受けるのか

まずは、公立学校でのお話をさせてください。私が採用選考試験を受験・合格した自治体は、すべての学校種において、1次試験で教職・一般教養と専門科目の筆記試験があります。加えて、英語によるグループディスカッションが中学校英語の受験者には課されるのです。1次試験合格後に受験する2次試験では、論作文と集団討論、個人面接が課されます。

私立学校・国立大学附属学校ですと、書類選考を経て筆記試験や面接、模擬授業などの採用試験の実施が多いです。公立学校との違いが出るのが、面接試験。受験者一人に対して、面接官は複数というのが基本で、教科教員だけでなく教務主任、教頭が担当します。また、学校によっては校長・理事長面接もあるのです。

ちなみに、過去に私が受験した私立学校の採用試験では、理事長・理事会役員・校長など10名ほどの面接官がずらりと揃った中で、受験者は私一人という面接がありました。担当の多さもさることながら、その場の重厚感に圧倒され、面接では何を答えたのか覚えていません。

教育学部と非教育学部、教師のなりやすさと教え方に違いはあるか

学部の違いによる教師のなりやすさは、あまり差はないように感じます。ただ、高校においては、非教育学部出身の先生のほうが、教育学部出身よりも多いでしょう。私の出身高校の英語科教員も大半が非教育学部の卒業でしたし、勤務していた国立大附属高校も私を除くすべての教員が非教育学部を出た方々でした。

また、教師のなりやすさと同様に、出身学部による先生の教え方の違いはほとんど感じられません。その理由の一つとして、教員免許取得時に必要な科目の共通性があると思います。大学による内容の違いはありますが、在学中に履修する「英語科教育法」は押さえるべきポイントは同じです。英語教育学専門書による教授理論への理解にはじまり、授業運営や発問の仕方、板書方法などを、模擬授業を通じて学んでいきます。さらには、それら最低限の基礎知識・技術を、教育実習を通じて発展・進化させていくのです。このような理論・実践の融合は、おそらく学部の種類に関係なく、教員免許取得において欠かせないでしょう。

けれども、先生によって教え方の違いがあるのは否定できません。その理由の一つとして、中学・高校で教わったやり方を、無意識のうちに自身の授業の型としているのではないでしょうか。さらには、教職に就いた後の公的・私的な研修会への参加など、英語教師としての研鑽を積み、独自の指導方法を確立していくこともあるかもしれません。個々の教師には、異なった強みがあります。それぞれが持つ英語指導・学習観が、その人らしさがある授業展開に反映されるのです。

中学・高校で英語を教えるにはどのくらいの英語力が必要か

文部科学省による「英語教育実施状況」の調査では、ある一定の英語力を証明する各検定試験資格を有する常勤の中学・高校英語科教員に関するデータを扱っています。そこに記述されている検定試験のレベルが、学校で指導する際に求められる英語力の指標となるでしょう。

平成29年度の調査結果によると、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)B2レベル(英検準1級・TOEICテストスコア730・TOEFL PBT550・CBT213・iBT80相当)である英語科教員は、中学校33.6%、高校65.4%です。年々その数値は増加傾向にありますが、それでも文部科学省が掲げる目標値である中学校50%、高校75%を大きく下回っています。さらに都道府県ごとに見ていくと、目標数値を余裕でクリアする自治体とそうでない自治体の差は、けっして小さいとは言えません。近年、後者の自治体の中には、検定資格の取得を促す悉皆研修を行うところもありますが、その効果が現れるにはまだ多くの時間がかかりそうです。

上記の内容を鑑みると、中学・高校で英語を教えるには英検準1級、TOEICスコア730以上は最低限必要です。ただ、難関大学進学希望者が多い学校であれば英検1級、TOEICスコア860以上となるでしょう。というのも、そのような学校ですと、大学入試における英語外部試験の活用の機会が高く、外国語系・国際関係系の学部を志願する生徒であれば、準1級を受験・合格するということが少なくないからです。彼らを指導する教員にとって準1級は必須ですし、1級合格は難しくても、せめてあと一歩で1級1次試験合格レベルは欲しいところです。

これまでに会った高校・中学教師の英語力の実態とは

非常に限定的な話になりますが、高校・中学教師の中には英検1級合格の方もいましたし、日々の業務の忙しさから受験すらしていない方もいました。私が出会った中では、英検1級保持の英語教師は10人いるかいないかの程度。数としては、けっして多くありません。そのほとんどが、進学校を含む複数の学校での教鞭経験があるベテラン層もいれば、大学在学中あるいは教員研修で海外留学を経験した方です。そのような方々は、元々の英語力の高さはさることながらも、それを維持するための勉強も怠っていません。

ただし、中学に目を移すと、英検準1級のほうが1級よりも多いという印象を持ちます。実際、私が勤務した公立中学校の場合、英語科教員7名のうち、私ともう一人の先生のみが準1級保持者。その当時、私のように採用前に準1級に合格するのはけっして多くありませんでした。また、採用後に資格試験を受験・合格するというのはなかなか難しいと聞いています。取得しなければいけないと思っていても、日々の業務の多忙さに加え、週末の部活動顧問があるため、勉強どころか受験すら困難な状況もあるのです。

最難関大(東大・京大)文系合格レベルの受験生と比較すると?

私自身、高校に勤務していた頃に、大学受験年次生の指導には携わっていません。そこで、これまでの勤務校で、最難関大文系合格を目指す生徒の指導に当たっていた先生たちを思い浮かべてみました。

まず、彼らに共通するのは高い英語力。英検1級・TOEICスコアオーバー900は当然でしたし、通訳案内士の資格も保有する方も少なくありません。そして、受験問題の分析においては、その見る目の鋭さが光ります。出題意図の本質に切り込み、実際の解答作成につながるように指導を展開していたのです。

そのように高い教養・指導力を兼ね備えた教師がいる一方で、多くの英語教師の実力は、最難関大文系合格レベルの受験生を上回っているとは断言できかねます。けれども、もしハイレベルな受験生への英語指導をするとなったら、どの教師も彼らの手本となるよう、より一層の研鑽を積むでしょう。そのような経験を通して、多くの英語教師は語学の習熟度だけでなく、指導力も高められるのです。

さいごに

高校・中学の英語教師に求められるのは、英語力だけではありません。教師の人としてのあり方・生き方という人間力も問われます。一人ひとりの生徒がよりよく生きるための指導・教育をする、学校教員としての資質・能力も必要です。

ただ、生活指導や部活動は、教師が生徒に向き合う時間のうちのほんの一部。その多くは、教員自身の専門教科の授業です。「教師は授業で勝負する」という言葉を、よく耳にします。それは、教科の専門家である教師の仕事とは何かを、暗に示しているのです。

授業を通して生徒の気づきを与え、学びを促すこと。さらには、生徒の心に火を灯せるようにもなるでしょう。そのためには、教える立場にある人間としての教養を高めるだけでなく、教科に関する知識を深め、指導力を付けていく努力を積み重ねていかなければならないのです。

ばーばら氏のコラム

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ばーばら
筑波大学大学院修了の高校英語教師、フリーランス翻訳者。大学は教育学部英語科に所属し、大学院では英文ライティングの指導方法を研究していた。現在は英検1級合格を目標に自身の英語学習を続けている。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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