学ぶとは、マネることである。

翻訳者・堂本秋次の『TOEICの難しさは数学に例えるとどのくらいか?』

   

TOEICの難しさを他のものに例えるのはなかなか難しいものがあります。本質的に違うものですし、取りこぼしてしまう要素も多いためです。しかし、比喩というのはだいたいそういうものなので、ここでは割り切ってTOEICの難しさを数学に例えてみましょう。

TOEICを数学で例えるなら?

あくまで個人的な所感になってしまいますが、TOEICは文系理系で共通レベルの高校数学全般程度です。つまり、数学I・Aと数学II・Bといったところでしょう。ところどころ難しい面もありますが、基本的には習った内容を押さえておけばそれなりの点数を取れるというところが似ています。満点を取るとなると独学もある程度必要になるところ、根本的なところに間違いがあると総崩れになりやすいところも似ている気がします。

全く数学を勉強していなかったという人にとっては、数学I・Aの問題であっても解き方すら分からない、回答を見ても何を言っているのか分からないということは珍しくないはずです。あるいは、『確かに高校で習ったが使わなかったので忘れてしまった』と感じることもあるでしょう。逆にある程度数学が得意であれば、6割くらいは事前に勉強しなくても解けるのではないでしょうか。TOEICはまさにそういうレベルのものです。

英検を数学で例えるなら?

では一方、数III・Cのレベルはどういうものかというと、これは英検1級に近いように感じます。英検1級は、よほどの英語好きが好き好んで受けるような試験です(個人の感想です)。そのため、問われる文法レベルや単語力も相当に高くなってきます。しかしそれでも、満点を取る必要はありません。英検1級に受かるには、あくまで合格ラインを越えていれば良いのです。

すると、よく言われる『TOEIC満点と英検1級取得はどちらが難しいか?』という質問には、この比喩をもって答えられるかもしれません。つまり、数学I・Aや数学II・Bの試験で満点を取るのと、数学III・Cの試験である程度の点数を取るのではどちらの方が簡単だろうか、ということです。

日常的な英語を数学で例えるなら?

それでは、日常的な英語力を数学で例えるとどうでしょうか。例えば、流暢に会話できる、基本的な洋書をすらすらと読める。そういった能力は、数学で喩えるとどういうものになるのでしょう。

まず会話できることについてですが、『基本的な会話ができる』というのは『中学レベルの数学ができる』に相当するのではないかと思います。何となく頭に残っていることだけでも、粗があったとしても成り立ちますし、よほどに苦手意識がなければおよそ誰でもそれなりの結果を残すことができるという点が共通しています。そう考えると、TOEICで点数を取るよりも、英検を取得するよりも実際の英会話の方が余程に簡単だとも言えます。

洋書を読めるということについてはどうでしょうか。これもどのようなレベルの洋書であるか(例えば児童絵本のようなものか、それとも短編小説か、あるいは論文か、哲学書か、エッセイかなど)にもよりますが、それは数学の文章題を読んだ時に『何を問われていてどう解けば良いか』ということをどの程度理解できているかに近いものがあるように感じます。

例えば、『次の図の円の面積を求めなさい』というレベルの文章題(と与えられた円の図形)を理解する難易度と、メールなどの短文で要件を受けて適切に理解する難易度はおよそ一致するように思います。しかし、『△ABCにおいて辺BCを4:3に内分する点を……この時、指定されたベクトルを表しなさい』と文章題を書かれたとき、これを理解するのにはそれなりに数学を学ぶ必要があるはずです。きっとそれは、それなりに読み応えのある洋書を読むときに必要な読解力に近いものがあるでしょう。

最後に

TOEIC満点は数学I・A、数学II・Bの試験で満点を取るようなものだ、英検1級は数学III・Cくらいだろうと聞いて、「難しそうだ」と感じる人も居れば、「意外と簡単かもしれない」と感じる人も居るかもしれません。ただ少なくとも、「無理だ」と感じなかったのであれば充分です。無理だと感じてしまうと、どうしてもやる気が起きないものです。一方もしもあなたが数学を得意としていて、数学III・Cをある程度理解しているのだとすれば、その努力と同じくらいの努力を英語に向ければ英検1級に合格できるかもしれない、ということでもあるのです。

堂本秋次
実務翻訳者、プロマジシャン。英検1級、国連英検A級、TOEIC965を保有。大学時代は、ネイティブスピーカーの教授の指導のもと、言語学を専攻していた。医学、自然科学等を専門とする多芸多才な翻訳者。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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