学ぶとは、マネることである。

翻訳者・堂本秋次が教える『大学生がTOEIC600を獲得するための勉強法』

   

TOEICで600点を取るというのは、英語学習者にとってひとつのマイルストーンになりつつあります。990点中600点と言えば6割にあたるので、なるほど分かりやすい指標とは言えそうです。では、具体的に600点を取得するにはどのような勉強が必要なのでしょうか。そして、TOEICで600点を取れるというのは、現実的には何を意味しているのでしょうか。

TOEICで600点を取れることの意味

一般にTOEICで600点を取れたというと、TOEICを受けたことのない人たちからすれば「英語ができるんだなぁ」という印象になるかと思います。しかし実際のところ、TOEIC 600点は英語ができるということとは全く関係がありません。個人的な所感では、TOEIC 600点というのはTOEICの試験で6割の点数という意味より多くの含みを持って”いない”ように感じます。

TOEICは990点満点ですが、選択式問題(四択が多い)ということもあって、適当に選んでもおよそ25%の点数は取れる計算です。つまり単純化して考えれば、全く英語を勉強していない人でも、250〜300点程度は取れるのが確率上の期待値ということになります。それを鑑みると、600点という点数は990点の6割ではありますが、『問題の6割を理解して解き、正解した』ということにはならないのです。

TOEICの600点取得者に実際に何ができるかと世間の期待との間には大きな隔てがあります。TOEICで600点を取得したからといって英語がペラペラとは限りませんし、洋書をすらすらと読みこなせるレベルの指標としては正確性が低いと言えます。もちろん、TOEICの点数に関わらず英語の読み書きがある程度できるという人も居ますので、『TOEICで600点はそのレベルに至っていない』ということではありません。しかし、TOEICで600点を取得している人に対して例えば『英語で議論をする』といったことを期待するのは、やや荷が重いと言えるでしょう。

TOEICで600点を取れる人に何が期待されているか、その現状は?

例えば企業の募集要項などを見ると、TOEICで600点台以上を取得していることが英語を使う業務における採用の基準となっていることは珍しくありません。これはつまり、TOEICで6割の点数を取れるのであれば日常会話や簡単な読み書き程度は当たり前にできることが期待されているようだということを現しています。

しかしその実際のところ、TOEICで600点が取れるというのは「英語についてどこかに得意分野がある」というようなことを表すに過ぎません。例えば文法問題が得意だったから600点に届いた、リスニング問題が得意だったから600点に届いたといったような具合です。言い換えれば、600点に総合的な能力のバランスが良い状態で到達するというのは、受験勉強で語彙や文法に特化した勉強をしたため、あるいは海外の留学経験があるためといったようなそれぞれの受験者のバックグラウンドを鑑みると、考えにくいパターンなのです。

そして英語の場合、どこかひとつの能力が飛びぬけているからといって、英語を流暢に運用することができるということにはなりません。全ての能力がバランス良く伸びていないと、どこかで無理が掛かってしまうのです。

TOEICで600点を目指すには?

ここまでで触れられた通り、TOEICで600点を取れるというのは、何か得意分野があって、そこを中心に点数を取得したというケースが考えられます。つまり逆に言えば、ただ600点に到達したいということであれば、何かに特化して点数を取れればTOEICで600点の壁を越えるのは難しいことではありません。

特にリスニングや長文問題は問題数が多いので、その辺りが得意だと比較的600点の壁は低く薄く感じるでしょう。さらに言えば、長文問題は文法や語彙が絡んでくる総合問題とも言えるので、リスニングや文法、語彙に注力して勉強すると点数が伸びやすいはずです。TOEICの文法問題はさほど難しくないため、ここで全問正解を狙うこともできるでしょう。語彙や文法を学べばそれだけ長文問題に対応する力もつきますので、総合的な能力の伸びが期待できます。

語彙については、社会系や日常的な語彙が幅広く用いられることとなります。そしてこの類いの語彙は、大学受験では培いにくい種類の語彙でもあります。特に例えば医学部などの専門性の高い学部を受けていると、医学系の語彙や論文に用いられる語彙には強くても日常的に使われる動詞の数を多く知らないためにちょっとした言い換えで分からなくなってしまうということが考えられるのです。語彙を学ぶときには、自分がこれまで学んできた語彙の種類がTOEICに対応しているかどうかを再確認するのも良いでしょう。

もちろん、一度TOEICを受けて自分の実力を知っている人は、自分のスキルで一番伸びしろがあるところを伸ばすと良いでしょう。例えば一度TOEICを受けて自分は文法に弱いということを知っていれば、文法を集中的に学習するのが最も点数に繋がるはずです。多くの人が正解するような文法問題をその人だけが間違えてしまっているというような可能性もあるからです。

まとめ

TOEICで600点を取得するというのは、英語が得意だという人にはさほど高いハードルではないでしょう。例えばセンター試験で9割を取れるような文法力・語彙力があれば、あとはリスニングを少し集中的に強化するだけであっさりと600点の壁が見えてきます。むしろ、そこからどのように上を目指していくかということ、その600点という点数による周りからの期待との齟齬にどう応えるかということの方が難しいのかもしれません。

●編集長からひとこと
センターで9割というのは東大や京大、医学部受験生、その他国立大受験生で英語が得意なタイプなら取れるかなあ、というレベルなので易しくはないのですが、そもそも国立大受験生は別の教科もたくさん勉強しているので、英語に当てた時間だけを累計すると、さほど多くはないはずです。大学入学後に改めて英語を集中して勉強すれば、意外とセンター9割以上のレベルに到達するのは簡単と感じるのではないでしょうか。
堂本秋次
実務翻訳者、プロマジシャン。英検1級、国連英検A級、TOEIC965を保有。大学時代は、ネイティブスピーカーの教授の指導のもと、言語学を専攻していた。医学、自然科学等を専門とする多芸多才な翻訳者。 詳しいプロフィール / 記事一覧

 - ピックアップ記事, 資格試験