学ぶとは、マネることである。

翻訳者・堂本秋次が教える『上級者になるための英文法の学び方』

      2018/06/03

ある程度英語を勉強していると、文法力は自然と身についてくるでしょう。多くの場合はそうして自然に身についた文法力で問題無いのですが、さらにレベルの高い文法力を身につけたいと思う場合はどうしたら良いのでしょうか?以下では、よりレベルの高い文法力を身につけるための方法について考えてみましょう。

レベルの高い文法力とはどういうものか

英検2級、TOEICなら600~700点以上を取れるのであれば、基礎的な文法力は十分に持っていると言えます。しかし、単語の用法の上での個別の制約や、can と may をどのように使い分けるべきかといったことや、そのほかにも a と the の使い分け、カンマの位置など、文法に関して学ぶべきことは次々に出てきます。

ここでのレベルの高い文法力とは、複雑な構文の文章や例外的な構文の文章を理解し、かつ助動詞や前置詞、句読法を正しく扱えるような文法力を意味するものとします。

知らない文法知識を理解する

語彙に比べ、文法は自分が『何を知らないのか』を把握しにくいと言えます。例えば助動詞のwillには『〜はそういうものである』というニュアンスの使い方があり、Children will behave like that.(子どもはそういう振る舞いをするものだ)のような用法がありますが、これは何かのきっかけにそういう用法があることを知って始めて『知らなかった』ことを意識できる例です。

基本的な文法知識の習得方法としては、TOEICで満点対策をするなどのほか、国連英検の問題に挑戦するという方法もあります。国連英検では『以下の文章の間違いを正せ』という問題が出題されるため、知識と照らし合わせながら正しい文法知識を身につけることができます。

分厚い文法書を読んでみる

文法はそれだけで研究の一分野になるほど広大であり深淵です。そのため、それを扱う文法書となると分厚い本となってしまうのが常ですが、個人的にはこうした分厚い文法書に目を通すことは非常に有益だと思います。こうした文法書の多くはその学説が支持される根拠も乗っており、多角的に文法を捉える機会になるはずです。

こうした優れた文法書としては、安藤貞雄氏の『現代英文法講義』、もう少し入りやすい入り口としては江川泰一郎氏の『英文法解説』があります。特に英文法解説は受験生が英文法というものを身につけることも意識して書かれており、難関大学に向けての文法学習としてもオススメの一冊です。現代英文法講義はもう少し細かい説明や事例を含んでおり、まさしく研究書という印象の本になっています。

高度な英文法を理解する必要はあるか?

この質問についてはその学習者の立場によると答えることになってしまうのですが、特に英語でプレゼン資料を作る場合や英語で報告書を書く必要がある場合など、書き言葉としての英語が必要になる際には正しい文法知識の必要性が増すこととなります。英語で契約書を書いたり読んだりする場合にも、適切な文法知識が必要になってくることでしょう。

一方、英検1級やTOEIC900の突破について英文法知識がどのくらい必要かということを考えてみると、それほど飛びぬけてレベルの高い文法知識は必要とされていない印象です。しかしこのレベルの学習者は基本的な文法については当然のように理解しているため、スタートラインに立つにはそれと同程度の、基本的な文法知識に対する抜け目のなさが必要であることは間違いありません。

翻訳家として必要な文法知識

最後に、翻訳家として文法知識がどれくらい必要かということについて個人的な意見をお話しましょう。

翻訳家として、正しい文法知識は絶対に必要なものです。翻訳していると、文法が正しくない文章や、いわゆる悪文の類いの文章を翻訳しなければならないといったケースに何度も遭遇することとなります。その度に、『本当にこれは文法を間違っているのか』や『敢えて文法を崩した可能性はないか』、『文法を間違えたとしたら筆者がもともと言いたかったことはどういうことか』といったことを考えなければなりません。その下地として、絶対的な文法知識が必要不可欠なのです。

また、英語ではitやthatで特定のものが置き換えられることが多いので、そうした指示代名詞が何を指しているのかを正確に把握する上でも文法力は重要です。関係代名詞の先行詞がどれを指しているのかによって意味が変わったり、形容している範囲や前置詞との結びつきがどこに及んでいるのかということを考えたりすることも、翻訳家にとってはとても重要なスキルです。

英語学習にとって大切なのは「楽しむ気持ち」

言語のプロフェッショナルとして活動する上では、文法力は必要なものであり、抜けがないようにしなければなりません。そのためには分厚い文法書を紐解く必要もありますし、文法上のほんの少しの違いにも敏感でなければなりません。

しかし英語学習において何よりも大切なのは楽しむ気持ちです。文法は非常にロジカルな仕組みになっていますし、適切に扱えば表現したいことをそっくりそのまま言うための言い方を見つけるための道しるべにもなるでしょう。小難しく考えすぎず、まずは楽しむ気持ちをもって英文法に触れるようにしてみてください。

●編集長からひとこと
英文法は、ネイティブスピーカーが使っている言葉の共通ルールを体系化したものです。あくまでネイティブスピーカーが使っている英語が「正」であって、文法書に書かれていることがすべてではありません。ただ、文法書に書かれている文法は、現代で使われている英語で「おおむね」共通となっているルールを示しているので、非ネイティブであれば文法を最初にマスターするのが英語を使いこなせるようになる近道です(※ただし、間違いを恐れて話せない書けないというのは困ります。多少間違っていてもいいから「実際に使う」ことはさらに重要なことです)。実は高校の教科書の文法からはみ出ている例外的な文法には「ネイティブらしさ」が潜んでいるのですが、英語の研究者や翻訳家などの英語のプロではない私のような一般的な日本人がそこまで覚える必要はないと思っています(笑)普通のひとは高校レベル(大学受験レベル)で十分ですよ?
堂本秋次
実務翻訳者、プロマジシャン。英検1級、国連英検A級、TOEIC965を保有。大学時代は、ネイティブスピーカーの教授の指導のもと、言語学を専攻していた。医学、自然科学等を専門とする多芸多才な翻訳者。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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