学ぶとは、マネることである。

翻訳者・堂本秋次が教える『自学自習で正しい発音を身に付ける方法』

   

英語を独学で学ぶ上で身につけるのが難しいことのひとつが『正しい発音』です。自学自習で正しい発音を身につけることは、果たして可能なのでしょうか。可能だとすれば、どのように身につけるのが良いのでしょうか。今回はそのようなことについて考えてみましょう。

最初に……この記事を書いている人の発音について

この記事を書いている人、つまり僕自身の発音の正しさについてですが、直近で受けた面接試験(英検1級、国連英検A級)での『発音の正しさ』はおよそ100点満点で言えば60〜70点程度でした。

具体的にどの程度かと言うと、海外の方とコミュニケーションしている中で聞き返されることはほとんど無く、基本的な子音の発音は区別して発音しており、母音の発音についても意識して発音しています。発音の強弱はおよそついており、音と音が繋がるリエゾンも発生しています。一方、至らない部分(30~40点分のマイナス点)は、いくつかの単語について僕が無意識に間違ったイントネーションや発音をしてしまっていることが考えられます。

これは、最低でも60点の発音ができていれば海外の方と話す上で障害になることはないということでもあります。以下では、100点の発音を目指すための方法というよりも、実際に相手に伝わる程度、英語の試験で少なくとも可や良をもらえる程度の発音を身につけるための方法について考えてみるとともに、では100点の発音とは何なのか、ということについても考えてみましょう。

自学自習における発音矯正の心構え

独学で英語を学んでいる人の多くは、その基盤となる英語力を義務教育や高校、大学受験などで身につけた英語により培っていると考えられます。つまり、まだ発音を気にしていなかった頃に身につけた英単語について、間違った発音を覚えたままになっているかもしれません。

例えばopenを『オープン』と発音してはいないでしょうか。onlyを『オンリー』と発音してはいないでしょうか。mudとmadは区別して発音できているでしょうか。簡単な単語ほどカタカナ英語に引きずられて間違ったインプットをしている可能性が高いので、『この単語は正しく発音できているか?』というのを常に自問自答するようにしてください。

発音関係の学習書で発音記号の意味を覚える

単語の発音を確認したいという場合であっても、その単語の発音を耳で確認できる環境が常に整っているとは限りません。そのため、発音記号の意味をしっかりと覚え、発音記号から正しい音を復元する能力を身につけておく必要があります。

このための書籍としてオススメしたいのが『英語耳』です。発音記号について細かく分かりやすい解説をしてくれている上、付属のCDでその音を実際に確認することもできます。

リスニングを用いる発音の矯正は有効か?

ネイティブの実際の発音を真似することができれば、確かに英語の発音をそれに近づけていくことはできるでしょう。シャドーイングをしたり何度も繰り返しその発音を聞いたりなどすることは、間違いなく発音を改善する一助にはなります。

しかし、そのお手本とするネイティブの発音がお手本として相応しい発音でない場合もあることに注意してください。ネイティブと言っても、その発音は千差万別です。日本語話者でも滑舌が良くないという人やイントネーションに癖がある人、いくつかの単語のアクセントが標準的でない人が居るのと同じで、英語話者にもそういったバリエーションが見られるのが常なのです。

そこで、お手本とするネイティブの発音は、例えばニュースキャスターの発音にする、名文と呼ばれているスピーチをお手本にするなど、ある程度その発音の綺麗さや明瞭さが客観的評価として確かなものを選ぶようにすることが大切です。

100点の発音とはどんな発音か?

これは色々な採点基準があるかとは思いますが、おおよそ、その採点(判断)をするネイティブが聞いて、同じくネイティブが話す英語であると確信できれば、それが100点ということになるでしょう。

つまり発音とは、減点方式が基本であると言えそうです。ネイティブと認めるには今の単語の発音は妙だとか、今のアクセントは少し英語っぽくなかったな、といったように、少しずつ『らしくないところ』で減点されていくのです。

こうなると、発音については『減点対象となるところ』をゼロにしていくしかありません。その『減点対象となるところ』を自覚できれば良いのですが、中にはそれが難しい部分もあるでしょう。そうなるとやはり、信頼できるネイティブと会話をする機会を設け、「発音で妙なところがあったら言ってくれ」とお願いする他ありません。

非ネイティブスピーカーに100点の発音は必要か?

これは個人的な意見ではありますが、少なくともある程度伝わる発音の正しさがあれば100点の発音は必要ないでしょう。もちろん、発音が綺麗で正しく明瞭であれば、それに越したことはありません。常に発音を改善するため、リスニングをしながら自分との発音の違いを確認したり、時にシャドーイングや教材の音読をすることで英語を発声する機会を作るなどの自己研鑽は大切なことです。

しかし、発音を綺麗にしようとするあまり、不完全な発音で会話をすることを恐れてしまうのはとてももったいないことです。例えばTEDなどを見ても分かる通り、『正しい発音』で会話をしている非ネイティブは決して多くありません。正しい発音を身につけるよりも大切なのは、まずその英語を声にしてみることなのです。そうしなければ気づけない発音の間違いもあるでしょうし、そうしなければ見つからない英語の楽しさもあるはずです。

●編集長からひとこと
ネイティブスピーカーは個々の単語をぶつ切りに発音しているのではなく、繋げて「連続的に」発音しています。テキストに書いてある英文では単語と単語の間にスペースが開いていますが、このスペースが「ない」と思って音読をしてみましょう。「単語を繋げる」ことが実に「省エネ」でラクな発音方法であると気づくのではないでしょうか?初学者はリエゾンを意識して音読することで、発音改善だけでなくリスニングでも英文が聞き取り易くなるはずです。
堂本秋次
実務翻訳者、プロマジシャン。英検1級、国連英検A級、TOEIC965を保有。大学時代は、ネイティブスピーカーの教授の指導のもと、言語学を専攻していた。医学、自然科学等を専門とする多芸多才な翻訳者。 詳しいプロフィール / 記事一覧

 - ピックアップ記事, 発音