学ぶとは、マネることである。

翻訳者・堂本秋次が教える『映画・ドラマなどのネイティブスピーカー同士の会話を聴きとるための自習方法』

      2018/03/05

「ちょっとした会話なら全く問題がないのに何故か映画やドラマになるとその内容が聞き取れない」ということは珍しいことではありません。これの主な原因は、一対一の会話なら相手がこちらのレベルに合わせて言い換えたり表現を反復してくれたりしているのに、映画やドラマになるとそういった『手心』が全くなく、かつ洒落た言い方をした方が物語の台詞としては効果的な場合も多いからです。

また、映画やドラマの表現は予め決まった台詞を口にしていることから、基本的に演技以外では言い間違えによる言い直しなどもないため、通常の会話で予想される『パターン』に当てはまらない会話となっている場合もあります。これも『観客』として会話を聞くことの難しさの一助となっているようです。

以下、その他映画やドラマ独特の難しさについて触れ、それを克服するための勉強方法について考えてみましょう。

映画やドラマの設定による難しさ

SFや西洋ファンタジー、あるいは歴史物、宇宙旅行をする主人公……そういったコンテキストで行われる会話で用いられる語彙は日常的な語彙からは離れがちです。映画やドラマはその多くが非日常を体験するのが目的ですので、日常的な語彙だけでは補えない部分が出てきてしまうのです。また、fuckやshitなどを用いるようなスラング的言い回しも多く、これを理解するのに苦労するという場合もあるでしょう。

これに加えて、例えばある映画に出てくる『無限不可能性ドライブ』のように、その映画で独特に用いられる語彙(造語)もあります。そうなると、何が造語で何が未知の単語なのか分からなくなってしまい、それに翻弄されている間にどんどん物語が進んでいってしまうのです。

物語の速度についていく難しさ

映画やドラマは限られた時間にパッケージングされた物語であると言えます。そのため、そうした中で繰り広げられる会話を一度聞き逃すと、それがその後の理解に大きく影響を及ぼすこともあります。一度出た重要なキーワードが、その後には暫くitやthatなどで代用されてしまうこともありますし、そうなると物語についていくのはなおさら難しくなってしまうのです。

映画やドラマを聞き取る練習

以上の難しさを踏まえると、基本的な語彙を抑え、スラング的語彙に慣れ、かつ物語における重要な語彙を聞き逃さないだけのリスニング力を身につける必要があるということになります。

しかしこれを一朝一夕で身につけることは当然容易なことではありません。そうした能力は日々の積み重ねの結果、いつの間にか身につける類いのものであることはすでにご存知の通りです。そしてそのための近道はありませんが、王道ならあります。

実に平凡に感じられるかもしれませんが、映画やドラマを何度も見る、これにつきます。最初は字幕付きで、次は字幕無しで、分からないところは字幕付きにして意味から原文を聞き取れるかを試し、もしも英語字幕を表示できるならそれを表示して答え合わせをすると良いでしょう。時間を取れるなら、映画やドラマをディクテーションするのも効果的です。

映画とドラマのどちらから取り組むのが良いか

映画とドラマのどちらが学習教材に向いているかと言えば、それはどちらでもOKです。ただ、映画の方が原作が手に入り易かったりして、その映画の状況設定を理解しやすいということはあるかもしれません。

しかし、映画やドラマを理解できるようになるまで繰り返し学習教材として利用するなら、その視聴回数は2回や3回では利かないでしょう。そしてそんなに何度も見ることになるのなら、お気に入りのドラマや映画でなければ続かないはずです。

どういったものを学習教材に選ぶにせよ、まずは長続きするような題材を選ぶことが重要なのです。

映画やドラマにチャレンジするべき学習レベル

どの段階でもチャレンジしたいときにチャレンジしてOKです。特に一対一の会話は充分に行うことができるという場合には、ぜひ映画やドラマも楽しむ姿勢で挑戦してみると良いでしょう。もしも『難しいな』と感じたら、もう少し後でまた戻ってくれば良いだけのことなのです。

ただし忘れてはいけないのは、映画やドラマは楽しむものであるということです。勉強の対象または教材として見るばかりに、映画やドラマを楽しむことができなくならないよう、気持ちを楽にして取り組むようにしましょう。

●編集長からひとこと
英語圏の映画やドラマはたいていの学習者には非常に難しく、TOEIC900を超えていても映画やドラマの理解度は数割くらいというひとも多いです。そのような方にお勧めしたいのは日本のアニメの北米版DVDを英語吹替で見ることです(※リージョンフリーのDVDプレーヤーが必要です)。日本のアニメは日本人向けに作られているため、日本人なら背景は簡単に理解できますし、翻訳なので理解不能なマイナーなイディオムもあまり使われません。今は北米版アニメDVDは、アメリカのAmazon.comから簡単に入手できます(しかも安い!)。『魔女の宅急便』『となりのトトロ』などのジブリもの、『機動戦士ガンダム』『エヴァンゲリオン』などのロボットもの、その他、美少女がでてくるオタクものなど、より取りみどりです。私もよく『機動戦士Zガンダム(古い…)』の登場人物(クワトロ大尉やカミーユ)になりきって、シャドーイングしています(笑)
堂本秋次
実務翻訳者、プロマジシャン。英検1級、国連英検A級、TOEIC965を保有。大学時代は、ネイティブスピーカーの教授の指導のもと、言語学を専攻していた。医学、自然科学等を専門とする多芸多才な翻訳者。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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