学ぶとは、マネることである。

【レビュー】英語で読む 村上春樹 世界の中の日本文学:村上春樹氏の短編小説を題材にしたNHKラジオ語学講座のテキスト

      2017/12/19

村上春樹の小説、バースデイ・ガールの英語版を、日本語版と対訳式で楽しむことのできる本です。

NHKラジオ 英語で読む村上春樹 世界のなかの日本文学 2017年 3月号 [雑誌] (NHKテキスト)

20歳の誕生日の日にイタリア料理店で仕事をしていた主人公は、普段の担当者の代わりに、ほとんど誰も顔を知らないオーナーに食事を届けることとなります。誕生日プレゼントに願いを叶えてくれるというオーナーに、彼女のした「願い」とは。

ラジオ番組と一緒に用いることが推奨されている本ではありますが、単独で用いることも可能です。

対訳とは言えど、直訳ではない

対訳部分は左側が英語、右側が日本語という形の対訳になっていますが、直訳ではなく意訳が含まれているほか、文章の訳の語順も変化している部分があります。そのため、初学者が手に取ると対応している訳が何処なのか一見では分かりにくく、戸惑うかもしれません。

意訳が含まれているため、初学者だと英文と訳との対応関係が分かりにくい
英語で読む村上春樹_01 英語で読む村上春樹_02
NHK出版『英語で読む 村上春樹 2017年3月号』

しかし、どこが意訳されていて何処の語順が変わっているのかについては詳しく解説されているため、本書を通して読み込むことができれば疑問が残るようなことはないでしょう。

小説的表現を学んだり、翻訳の妙を学んだり

エッセイや記事などに比べて英語小説を読むのが苦手という人は少なくないでしょう。本書は、そんな人が英語の小説的表現を学ぶのにも良さそうです(もちろん、文体自体が合わない、そもそも村上春樹の小説テーマが好みでないなどの場合はその限りではありませんが)。

あるいは、単なる直訳、英語訳ではない、翻訳としての創意工夫について学ぶこともできます。原文にある表現が省略されていたり、逆に原文にない表現があったり、日本語のニュアンスを出すために他の表現で置き換えられていたり、冗長にならないようにテンポが意識されていたり。気付きによって、様々なことを学ぶチャンスをたくさん発見できるでしょう。

文法レベルと単語レベルはそこまで高くない

村上春樹の小説は平易な日本語で深淵なテーマを扱うことで知られていますが、英語版でも特別に難しい文法や単語のレベルが求められるわけではありません。

極端に難しい文法や語彙はないが、読解するには英検2級以上の力が必要
英語で読む村上春樹_03 英語で読む村上春樹_04
NHK出版『英語で読む 村上春樹 2017年3月号』

全体の表現について学んだ後の項では単語や個々のフレーズについて解説もされているので安心です。全体としては、英検2級くらいの英語力があれば、それなりに読んでいくことができるでしょう。あるいは元になっている村上春樹の小説を読んだことがあれば、もっと読みやすいかもしれません。

むしろ、平易な英語と文法で様々な表現をすることができることを学ぶことで、英語の作文能力や読解力が上がる面もあるでしょう。ただし、あくまで小説的な表現ではありますので、使いどころには注意です。

まとめ

  • 村上春樹の小説の英語版と日本語版の対訳。
  • 直訳でないため、一瞥しただけでは英語と日本語の対応箇所が分かりにくい面もある。
  • しかし、訳した際の創意工夫については解説があるため、読み込めばおおよその疑問は解決する。
  • 比較的平易な文章となっているが、小説的表現が多い。
堂本秋次
実務翻訳者、プロマジシャン。英検1級、国連英検A級、TOEIC965を保有。大学時代は、ネイティブスピーカーの教授の指導のもと、言語学を専攻していた。医学、自然科学等を専門とする多芸多才な翻訳者。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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