学ぶとは、マネることである。

翻訳者・堂本秋次の『日英翻訳の仕事をするためのライティング勉強法』

      2017/12/14

日英翻訳を仕事としようと考えたとき、大きな障害となるのは恐らく、英語で文章を書かねばならない、というところでしょう。ライティングとスピーキングは多くの人が苦手であるとしている技能分野でもありますが、これを伸ばしていく方法は何か無いのでしょうか。以下、あくまで個人的な所感ではありますが、そのヒントのようなものを共有させて頂ければと思います。

まずは英文を書くことに慣れる

日常的に英語で文章を書かなくてはいけない、という人はあまり多くないかもしれません。そのため、まずは英語で文章を書く習慣を付ける必要があります。

例えば海外のフォーラムや掲示板などに英語で質問をしたり意見を書き込んだりするといったことのほか、英語で日記を書く、英語で予定を記録するなど、日常的に英語を使う”ことのできる”場面は多く存在しています。こうしたチャンスをものにして、英語を使うことに対する抵抗感や違和感がわき起こらないようにしてください。

文法や語法にはこれ以上無いほどの注意を

知っていると高をくくらず、とにかく文法について「知らなかった」が無いようにしてください。

aとtheの使い分けをもう一度確認する、正しい前置詞を使えているかを確認する、文脈に適した語彙を選べているかを確認するなど、普段から英文を書く際、「知っている」ことも一応調べるという習慣が必要です。ここにカンマが入っていてはいけないのではないか、ここはセミコロンではなくコロンではないか、andをここに入れると別のものを並列している誤解が生まれないかなど、気にするべき点は無数にあるはずです。

これは特に、「英語を話せる」という人や、「帰国子女である」という人ほど陥りやすい罠です。日本語でも、口が上手い割には文章を書くのが下手だ、ということが決して珍しくないように、「英語で話せる、英語を使える」ということと、「文章が上手である、文法を正しく使える」ということは全く別なのです。

文法や語彙などについて、常に”調べる”ことを怠らないようにしてください。時には日本語のニュアンスを確認するために日本語の辞書を引くことも大切です。自分の知識を信用せず、必ず辞書や参考書、バックグラウンド、出典などを確認するようにしましょう。調べた結果に疑問があれば、別の辞書で引きなおす場合もあるかもしれません。

日本語を英語にするということ

日本語と英語では、言語的な性格として大きく異なる面がたくさんあります。そのため、日英翻訳をする際には時に大幅なリライトが必要になることもあるでしょう。日本語的な語感のまま英語に直すと、英文としては奇妙な情報の羅列となったりすることもあるからです(もちろん、直訳が良いという場合や、そういったオーダーをクライアントから受けることも珍しくはありませんが)。

この時に重要になるのは、『英語としての良文』にどれだけ触れてきたかです。日本語で綺麗な文章を書くには綺麗な日本語がどういうものかを理解しておかねばならないのと同様、英語で綺麗なリライトをするなら、英語の良文に多く触れる必要があるのです。ですので、本を読みましょう。洋書やネットの記事を良く読み込み、『英語的表現』を吸収していくのです。

自分は何も知らないのだ、ということを強く意識する

これは未だに僕自身も信条としている考え方なのですが、「自分は無知で、知らないことがたくさんある」ということを強く意識することが大切だと感じています。だからこそ新たに語彙を学ばねばならない、知らない語彙は調べなければならない、文法も必要に応じて文法書を紐解く。

知っているつもりにならない、小さな積み重ねを怠らない。そういったマインドセットこそ、一番必要なものなのだと信じて止みません。まずは自分が「何を知らないのか」を理解することが重要であるというのは、ソクラテスの時代からの教えでもありますね。

堂本秋次
実務翻訳者、プロマジシャン。英検1級、国連英検A級、TOEIC965を保有。大学時代は、ネイティブスピーカーの教授の指導のもと、言語学を専攻していた。医学、自然科学等を専門とする多芸多才な翻訳者。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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