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【レビュー】対訳モーム 1:娯楽性の高い作品を発表し続けたイギリスの作家、サマセット・モームの短編を楽しめる対訳本

      2017/11/05

一流のストーリーテラーであり、エンターテインメント性の高い作品を発表し続けたモームの短編2編の原文を収めた対訳本です。

対訳モ―ム1 (現代作家シリーズ)

モームが見つけた「人生の意味」とは

8歳のときに母を、10歳のときに父を亡くしたモームは、叔父に引き取られますが折り合いが悪く、さらに吃音があったため、孤独な少年期を送りました。人一倍敏感で傷つきやすかったからこそ人間の本質や人生を見つめざるを得なかったのであろうモームは、代表作『人間の絆』において「人生に意味はない。だからこそ自由に生きてよいのだ」という人生論を展開します。

さまざまな経験を積み、あらゆる事象を客観的に見つめながらもいかにも英国人らしいシニカルなユーモア精神を添えて人間や人生をつづったモーム。次の名言に思わずクスリとしてしまうあなたなら、彼の皮肉や機知に富んだ文章の魅力にハマること間違いなしです。

“Why do nice women marry dull men?”
“Because intelligent men won’t marry nice women.”
「なぜ美人はつまらない男と結婚するんだ?」
「賢い男は美人と結婚しないからさ」

掲載作品と簡単なあらすじ・特徴

『人間の本質』

ベティを想い焦がれたキャラザーズが、その恋のいきさつをモームとおぼしき「私」に語ります。キャラザーズが崇め奉ったベティとは、どのような女性だったのかが明らかになっていきます。

女性を好まなかったモームらしく、ベティが本気の恋愛をしているなどとはさらさら書かれていませんが、彼女とて「身分違いの恋」に苦しむ女性の一人ではなかったのでしょうか。現代日本の読者としてはベティの自由闊達な言動を自然に思うのですが、当時の上流階級からすれば、彼女の振る舞いは果てしなく野卑に見えたのでしょう。いまだに階級意識が根強く浸透する英国を鑑みると、あながち時代めいた話ではないのかもしれません。

『ホノルル』

バトラー船長が体験した超神秘主義的体験とはどのようなものなのか、これまたモームとおぼしき「わたし」と共にお楽しみください。MI6の諜報員として活動し、各国を旅行して廻ったモームの東洋に対するイメージに触れることができます。日本人の描写もお見逃しなく。

難しくはないが一文が長い文章

ある程度英語を学習した人にとっては、むしろ日本語訳の方が難解に感じるかもしれません。複雑な構文はあまりなく、語彙レベルもそれほど高くないため、TOEICスコアが650以上あれば挑戦できるでしょう。

複雑な構文はあまりなく、語彙も極端に難しくない
対訳モーム_01 対訳モーム_02
南雲堂『対訳モーム 1』

ただし一文が長い傾向にあるのがモームの文章の特徴です。例えば今ぱっと開いた80ページ目には7行や10行にわたる文が散見されます。しかしモームの文章は冗漫ではありません。説明は的を射ており、むしろ読者の理解を促すものとなっています。

まとめ

  • 人間や人生を冷徹に見つめた大家モームの文章をダイレクトに味わえます。
  • 英国人らしい皮肉や機知が好きな方におすすめです。
  • 各文が長いのを除けば、英語学習の中級者以上が取り組めるレベルです。
のあり
早稲田大学第一文学部文芸専修卒。元・国語教師および日本語教師であるにも関わらず、英語講師も顔負けのTOEIC930点を独学で獲得。高い国語力と英語力を武器に高品質な記事を量産する。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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