学ぶとは、マネることである。

ビジネスマン・さかえが教える『リアルなビジネスの現場で要求される英語力について』

      2017/07/04

ビジネスの現場、とひとくくりに言っても、企画、営業、総務人事系、専門職など、多岐にわたります。

私の仕事を一言で言うと専門職兼営業職ということになります。そのため、分野ではやや偏ったものになるかもしれませんが、どの分野でも通じると私が考えている原則のようなものはお話ししますので、ご了承いただければと思います。

また、会話・読み書きともに大切で、一通りのことはできないといけませんが、どちらにより注力すれば良いかはそれぞれの業務内容によりますから、それはご自身で判断してください。

TOEIC、英検はその大部分がいわば「基礎体力作り・基本動作の練習」である

英語学習をスポーツにたとえてみましょう。どのスポーツでも良いのでイメージしてください。スポーツの経験のない方は音楽でも何でも構いませんから、練習から本番までの各段階を置き換えて読んでください。

スポーツの練習を分解すると次のようになります。
1. 基礎体力作り
2. 基本動作の練習
3. 技術練習
4. 試合

まず、基礎的な体力が不足していればそのスポーツを行えませんし、怪我をする危険も増します。ですから、最初は走り込みで持久力をつけたり、筋力トレーニングでパワーをつけたり、ストレッチや柔軟体操で柔軟性を高めたりするでしょう。これが1の基礎体力作りです。

次に、野球であれば投球フォームの練習・キャッチボール・バットの素振りといった練習をします。サッカーやバスケットボールなどであれば、ボールの扱い方の練習、ドリブルの練習、パスやシュートの練習など、そのスポーツにおける2の基本動作の練習を行うでしょう。

格闘技であればパンチやキック、防御の基本動作を何千回も、何万回も繰り返すこともあるでしょう。

1で身に付けた基礎体力、2で身に付けた基本動作を組み合わせて行うのが3の技術練習です。

これは試合の一場面を想定してその場面になったときにどういうフォーメーションで動くのか、基本動作を組み合わせてどのように技を出すのかといった、より実践的な練習です。

野球であればワンアウト・ランナー2、3塁の状態でライトに大きなフライが飛んだ、その時守備の各ポジションはどのように動いて3塁ランナーのタッチアップを防ぐのかなどといった練習をするでしょう。

格闘技であれば相手が右ローキックから上段右ストレートを打ってきた、どのようにこれらの攻撃をさばいて反撃するかといった約束組手や、スピードやパワーをある程度セーブして自由に攻撃を出し合い、防御し合い、反撃し合う自由組手などがこれに当たります。

そして、ここまでで身に付けた基礎体力・基本動作・技術や戦術といったものが実際に試されるのが4の「試合」です。

やや前置きが長くなりましたが、これを英語で行うビジネスの現場に当てはめてみます。

1. 基礎体力作り
これは文法・単語・熟語などの学習が該当するでしょう。

2. 基本動作の練習
これについては基本的な例文の読み込み、比較的短いスクリプトの読解やリスニング、英作文、あるシチュエーションを想定した英会話パターンの学習などが該当します。

3. 技術練習
これは2と比較すると程度の問題になりますが、本格的な英文記事の読解、長いスクリプトのリスニングや比較的長時間の自由な会話やゼミ・ディベート、レポートの作成などが該当します。

4. 試合
もちろん実際のビジネスの現場です。

TOEICや英検などについては、もちろんあるスコアのレベルや英検何級といった目標を立てて勉強することは大いに意義のあることですし、どんどん勉強していただきたいのですが、その勉強の大部分は上記2までの「基礎体力作り・基本動作の練習」にとどまってしまう面があります。

英検であれば準1級までは比較的長時間のスピーキングや英作文は求められませんし、TOEICは初級者も上級者も同じ問題を解くという試験の性質上、かなり複雑な問題というのはあまり見られません。学習者ごとの学習の進み具合の差によって語彙レベルもリスニング力のレベルも当然違いますから、それによってスコアに差が出ているに過ぎない面があります。

TOEIC・英検などの英語力の試験とビジネス現場とのギャップ

ビジネス現場で英語を使う場合、要求されていることは特に特別なことではありません。

情報を的確に分析し、その結果を正確に伝え、間違いなく業務を処理してより良い結果につなげる。これを日本語ではなく英語でする、というだけのことです。

しかし、上のように一言で言うのは簡単ですがこれがかなり難しいことでもあります。

情報を分析するにしてもその前提となる業界情報や業界動向を知っていないとできるものではありませんし、分析手法も知っていなければなりません。

情報や情報の分析結果を正確に他者に伝えるためには、英語が正しくその場に応じて使えるのは当然で、どのように伝えたらよいかということを考えなければいけない場面もあります。

間違いなく業務を処理するためにもその分野に精通していなければいけないでしょう。

TOEICや英検の試験問題はあくまでも基礎体力・基本動作である「英語の力」だけを見るものですから、こういった実践的なことを全く知らず、全く経験していない状態でもハイスコアは取れてしまうのです。

ビジネスの現場はスポーツの例の「4. 試合」の段階の連続と言って良いですから、TOEICや英検だけでは必要とされる基礎体力が身に付いていて、「基本動作ができますね」という認定を受けたに過ぎないという面があります。

これだけではアルバイトのような単純作業はできても、よりステップアップするためにできるようにならなければいけない高度な作業、たとえば交渉、判断、契約締結、プレゼンなどといったことを行うために必要なスキルを身に付けるには不足です。

ここで、英文翻訳関連の仕事、という面から見てみましょう。

翻訳者もピンからキリまでいらっしゃって、ただ単に英語を日本語に翻訳できる、というだけでは月々の収入が10万円台程度、とてもそれだけでは生活していけないという方もいらっしゃれば、戸田奈津子さんのように映画の字幕作成の大家と認められてかなりの収入(どの程度か私にはわかりませんが…)を得ておられると推測できる方もいらっしゃいます。

英語ができても、業務の結果を見るとこれだけの差が生まれてしまうのです。

●編集長注
一応、戸田奈津子さんの収入が気になる方のために調べてみました(笑)。映画字幕1本で40万円、それが年間数十本だそうです。単純計算で2000万円/年くらいですね(ネット情報なので鵜のみにしてはいけません)。これを多いとみるか、少ないとみるか。私は「あれ…日本一の字幕翻訳家なのに意外と少ない…?」と思ってしまいました。ちなみに、ハリーポッターの翻訳をした松岡佑子さんは、2006年に35億円の翻訳料申告漏れを国税局に指摘されています。ベストセラー小説の方が夢がありますね(笑)完全に余談でした。

TOEIC・英検のための勉強の意味

ビジネス現場で要求される英語力、と言っても私はそれほどTOEIC・英検と変わるものではないと思っています。

こう言うと前段までとやや矛盾するかもしれませんが、スポーツでも最初の1~4の各段階はそれぞれフィードバックして行ったり来たりしながら、あるいは並行して練習を進めるものです。

たとえばある試合で負けた、それはなぜかを考えます。自分やチームの基礎体力が足りなかったなら徹底的に走り込みをしたり、筋力トレーニングのメニュー・スケジュールを見直したりするでしょう。

基本動作に変なクセが付いていたということであれば、もう一度基本動作を見直して徹底的にやりこみます。

英語も同じで、ビジネス現場で上手く行かなかったのであれば徹底的に分析します。
英語力が不足していて相手に十分自分や自社の言わんとしていることが伝わっていなかった、誤った文章を書いてしまったということであればTOEICでより高いスコアを取れるよう、英検でより高いレベルに合格できるよう勉強することは大変意義のあることだと考えます。

英語に限らず勉強に関しては全般的にそうなのですが、相対的に考えるようにしてください。

私はTOEIC・英検の勉強がビジネス現場では全く役に立たないとは考えていません。必要な勉強ですがそれだけでは不十分と考えています、と言っています。ビジネス現場でそのまま役に立たないからこれらの勉強は意味がない、という考え方だけはしないでください。

スポーツでも、たとえば腕立て伏せを休みなく連続1000回できる人(人間の限界を超えているとは思いますが…)、そんな人が経験も練習もせず、いきなり野球のバットを握ってもホームランを打てるわけがないのと同じことです。

ビジネス現場で通用するようになるための考え方

前段までの話、英語をスポーツにたとえてお話ししてきましたが、英語に関しては最初にお話しした3の技術練習の段階、これがすっぽり抜けていることに気付いていただけたでしょうか。

これまでに学習してこられた英語の基礎体力・基本動作を実際の試合であるビジネスの現場で活用するためには、技術練習が必要になってきます。

では、技術練習とは何でしょうか。単なる英会話の練習、英語プレゼンの練習、そういったことではありません。それはどちらかというとテクニックの話で、ここで必要となる技術練習はもっと本質的なことです。

それは、基礎体力・基本動作を無駄なく、無理なく、効率的にアウトプットするために必要なご自身の業務分野での専門知識の習得、業界動向の分析などといったことになります。

これはTOEICや英検のための勉強ではなかなか身に付きません。また、手取り足取り教えてくれる教育機関やサービス提供者もなかなかいません。この大部分は自分で試行錯誤しながら勉強しなければなりません。

実際に私はある日本の資格を取得して、その業界のことをよく知らないまま転職、現在の仕事に就いていますが、英語を使って仕事をするようになった最初の頃は何もわからず手も足も出ないという状態でした。その頃は英語の基礎的な学習はZ会の速読速聴・英単語シリーズは『Advanced』まで全てマスターしていましたから、英語力自体の不足は特段ありませんでした。

では、なぜわからなかったのか。

それは、「日本語で知っている専門用語を英語で言われたり書かれたりすると手も足も出なかった」ということが原因です。

loan to value ratio=gearing ratio(負債比率)、floor area ratio(容積率)などといった、一つ一つの単語はそう難しくなくても、組み合わせて言われると専門的な知識になるような言い回しなどが多く出てくるため、言われていること、読まされていることと自分の頭の中のイメージや知識が全くつながらないということが原因でした。

なぜ上手く行かないのかをここまで分析した後は、自分の専門分野の知識を基礎から英語で勉強しなおすということをやりこんでいました。並行して業界動向を英語で読み分析するということも行いましたし、今も継続しています。

これが3の技術練習に当たります。プレゼン練習などの英語でアウトプットするテクニックを身に付けることも当然行うべきですが、同じくらい重視していただきたいのはこういう本質的な部分です。

英語でビジネスを行うために必要なこと

英語でビジネスを行う場合のアウトプット結果をざっくりと方程式として表すと、
(英語力+自分の専門分野の専門知識など)×変数a=成果
ということになります。

変数aとは、相手方との相性やタイミング・競争相手の有無などの自分ではどうにもならない面もある不確定要素を表すために入れておきました。

皆さんもお分かりでしょうしご経験もあるかと思いますが、自分ではどうにもならないこともビジネスの現場にはたくさんあります。そこで自分にできることは、自分の力や努力でよりプラスの方向に動かせることに全力を尽くすことだと思います。

上の方程式をもう一度見てください。英語を使ってビジネスをするのであれば英語力をつけるのは当然で、その他に培った英語力を自分のフィールドで使うために必要な専門知識などを英語力に加えて身に付ける必要があるということを表しています。

英語力と専門知識などは車の両輪

一部うろ覚えですが、以前パソコンスクールか何かのコマーシャルでこのような話を見たことがあります。

ある英語のできる女性が、「英語力を活かした仕事をしたい」と日本人上司にアピールします。日本人上司が彼女に要求したことは、「エクセルでこのデータまとめておいて」でした。

そのようなことが続いて、理想と現実のギャップに悩む彼女は、外国人上司に「英語力を活かして仕事をしたい」ともう一度訴えます。

外国人上司の答えは、「パワーポイント使える?」でした。そして彼女は絶望してしまう、というのがオチでした。

このコマーシャルの筋書きをどう読まれるでしょうか。英語よりも各種アプリケーションが使えるかどうかの方が重要だと考えますか?

私はこう考えます。
「このコマーシャルはパソコンスクールのものだから、最後にパソコンを学ぶべきだと訴えかけるオチにしているのだろう。でも現実のビジネス現場で、もしも彼女が(元々持っていた英語力に加えて)各種アプリケーションの使い方をマスターするよう努力したら、彼女は大きくステップアップできるだろう。パワーポイント使える?と言われたときにパワーポイントを勉強していれば、外国人上司にもなんなく読めるように日本語と英語でそれぞれの資料をまとめることも彼女ならできるだろう。そうすれば自分の希望通り英語力を活かした仕事をする権利をつかむこともできただろう」

コマーシャルでは英語力以外の知識や技能はアプリケーションの使い方という比較的簡単なものでしたが、知識・技能などはビジネスの現場には無数の分野があります。実は英語力プラスアルファでご自分の選択した分野の知識・技能を身に付けなければ、本当に英語をビジネスに活かすことはできないと考えています。

英語力も、その業務を行う上で必要な知識・技能も、両方必要不可欠で車の両輪ともいうべきものです。そしてその両方がそろわないと、英語でビジネスをするなどということはできません。

専門的な知識・技能については分野が無数ですから、私や英語講師がお教えすることはできません。これについては自分で七転八倒して勉強するしかありません。

ただし、英語で専門知識を勉強する中で当然英語力も伸びていくでしょうから、ある程度勉強が進むとその速さは加速度的にアップしていくパターンが多いと感じています。決してあきらめず、英語でも仕事の上でも、自分に何が必要なのか、何が足りないのかを常に分析しながら学習を進めていただきたいと思います。

さかえ
上智大学法学部卒のビジネスマン。大学在学中は、純正日本人でありながら帰国子女率80%の上級英語クラスに所属していた。TIME誌、Newsweek誌は辞書なしで読解可能。愛読誌は『The Wall Street Journal』『The Economist』。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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