学ぶとは、マネることである。

【レビュー】英語冠詞大講座:ほとんどの日本人が苦手な「冠詞」の使い分け方を詳細に解説した本格的な研究書

      2017/05/25

どれだけ学んでも使い分けが難しい、「冠詞」にまつわる疑問を解消するための本です。軽い読み物では決してなく、ほとんど研究書の域に達している本ですが、練習問題も充実しているため、本気で英語を学びたい人にとっては必読の書と言えるでしょう。

英語冠詞大講座

冠詞の様々な使い分けを詳細に解説

「どういったときに不定冠詞でどういったときに定冠詞を用いるか」といった解説はもちろん、「数えられる名詞」と「数えられない名詞」にどのように冠詞をつけるべきか、「東京タワー」のような地名には the は必要か否かといったような、「そう言えばどうなのだろう」といった疑問に総当たりしています。

固有名詞が通常名詞化する例や、補語になる一部の一般可算名詞に冠詞を付けない例など、非常に細かく、かつ大半の学習者が間違って覚えている(あるいは意識しては学習していない)部分に切り込んでおり、冠詞で悩んだ経験のある人にとっては痛快でしょう。

大半の学習者が間違って覚えている部分に切り込んだ詳細な解説
英語冠詞大講座_01 英語冠詞大講座_02
猪浦 道夫『英語冠詞大講座』

所有形容詞や、anyおよびsomeの使い分けにも言及

your や his、my などの所有形容詞を使うべき場面と定冠詞を使うべき場面の区別についても触れています。

例えば、He seized me by _____ hand.(彼は私の手を掴んだ)のような文章で、hand の直前には、the、my、あるいは無冠詞のどれが正しいだろうか、といったようなことまで網羅しており、国連英検特A級の文法問題対策レベルの高度な文法知識が得られます。

そのほか、any や some の厳密な使い分けや、逆に使うことができない場面、使わない方が良い場面についても解説があり、「なんとなく」で覚えていた知識が確かなものになるのを感じることができます。

冠詞の概念から

『英語冠詞大講座』では、冠詞は発話者の意識の問題で決まるところが多い、という説明が成されることが多くあります。また、最初の方の章では、冠詞という品詞が英語という言語においてどのような機能を持っているのかについても述べています。

「ちょっとaとtheの使い分けが知りたい」という気持ちで手に取ると、あまりの情報量の多さに混乱するかもしれません。その意味で、この本は間違いなく英語上級者向けです。

冠詞は発話者の意識の問題で決まるところが多い
英語冠詞大講座_03 英語冠詞大講座_04
猪浦 道夫『英語冠詞大講座』

冠詞の勉強は必要か?

冠詞という英語独特の品詞について勉強する意味について考えたとき、「あくまで発話者の視点が言葉に表れているのだ」という立場に立つと、わざわざ冠詞を勉強する必要はないかもしれません。

例えば、the は既知の事柄に付ける、などと一般に言われますが、自分だけが知っていることについて the を付けて話してしまったとき、それは間違いというよりも、「話者の中では知っていたことについて相手は知らないのを、話者は忘れていた、あるいは意識していなかった」ということになるのです。つまり冠詞というのは勉強して使い方を覚えるものというよりも、本来は言語運用の中で徐々に身についていくものであると言えるでしょう。

しかし、例えば英語で長文を書くときや、スムーズな情報伝達が必要なとき、英語の小説の微妙なニュアンスを理解したいときなど、冠詞の知識が必要となる場面は枚挙にいとまがありません。

確かに「改めて勉強する」というと妙なテーマに感じられるかもしれませんが、第二言語として英語を話す人にとって、冠詞を学ぶということは英語の真髄に近づくということに他ならないのです。もしも貴方にその気概があるのなら、本書はその道しるべとなるに違いありません。

まとめ

  • 冠詞の運用に関する様々なテーマについて事細かに掘り下げた一種の研究書。
  • 冠詞というものを根本から見つめ直し、イディオムの中の冠詞の在り方などにも言及。
  • 真に英語を極めるために、あらゆる学習者が必ず目を通すべき本。
堂本秋次
実務翻訳者、プロマジシャン。英検1級、国連英検A級、TOEIC965を保有。大学時代は、ネイティブスピーカーの教授の指導のもと、言語学を専攻していた。医学、自然科学等を専門とする多芸多才な翻訳者。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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