学ぶとは、マネることである。

翻訳者・堂本秋次が教える『英検1級合格に必要とされる英文法力について』

      2017/05/21

そもそも高度な文法力とは?

「英検1級に合格したいのですが、文法を伸ばすために良い本はありますか」と訊ねられることがありますが、これほど困る質問はありません。それというのは、英検1級のために特別な文法が必要だとは、僕には思えないからです。

そもそも、特別な文法や、高レベルな文法知識というのが僕にはよく分かりません。冠詞の厳密な使い分けや、分詞の修飾位置による意味的付与の違いでしょうか。それとも、あるいはカンマの有無や、コロン、セミコロンの使い分けによってどのように意味が変化するかに関することでしょうか。きっと、そうではないのでしょう。

英検1級の文章は、確かに空所補充問題も長文問題も難しいように感じられます。しかしそれは、まだ学習していない特別な文法を用いているからではないのです。多くの場合、修飾と被修飾の関係性や、itなどの指示語の内容が分かりにくかったり、あるいは単に高難易度の単語が頻出しているか、知っていると思っている単語が実は全く違う意味で用いられたりしていることによる理解の阻害が原因です。

とはいえ、文法力ゼロでは敵わない英検1級の壁

もちろん、英検1級ともなれば、倒置法だったり、asが関係代名詞的に用いられていたり、ifの意味でprovidingが用いられているなどといったようなことは当たり前のように出てきます。もしもこうしたことが難しいと感じられるのであれば、確かに一度、文法書を弾き直す方が良いかも知れません。

しかしその場合でも、『英文法解説』や『ロイヤル英文法』『ネクステージ』などで用いられている文法よりも細を穿つような英文法は要求されません。ただ、こうした文法書で言われている文法については確実に頭に入れておく必要はあるでしょう。

言い換えれば、「難関大学の入試レベルの英文法が完璧」であれば、英検1級に必要な文法力は充分と言えます。その場合、英検1級に必要な文法力はすでに身についていると言って過言ではありません。

そうでない場合でも、「一般的な大学の入試レベルの英文法(センター試験など)」が9割方理解できていれば、あとは英検1級のための勉強をしていく中で新しい項目について学習することができますので、充分にスタートラインに立っていると言えます。もしもそうした文法知識からうろ覚えであるという場合は、一度復習しなおした方が良いと言えます。

ただ、英検1級を目指しているという以上、すでに2級は取得していてさらに先を見据えているか、あるいは準1級は取得しているような人がほとんどであると考えられるため、それで文法力に致命的な抜け落ちがあるというケースはあまり多くないと考えられます。

文法力を身につけるたった一つの『冴えない』やり方

では、いざ文法力を勉強しようというとき、どうやって勉強するのが良いのでしょうか。これはあくまで個人的な方法ですが、僕は総当たりするしかないものと考えています。

最初のうちは、「自分は関係代名詞がよく分かっていない」だとか、「現在分詞とto不定詞の使い分けが苦手だ」などとなんとなく自分の苦手な文法事項を理解しているものですが、ある程度の文法を理解してくると、自分が「何を理解していないのか」を理解するのが難しくなってくるのです。そしてあるとき、「何故か読めないセンテンス」や「何故か読み違えてしまった文章」といったものに出くわし、その時に運が良ければ気付くことができるのです。

そのため、僕は分厚い文法書を買い、それを頭から読み直すという作業をずっと続けています。そうする中で、自分では意識していなかった文法の使い分けが明文化されているのを発見し、自分が「何を理解していなかったのか」を自覚することができるのです。こうする他、自分の知らない文法知識という穴を埋める方法はないように思います。

もしもあなたの本棚に分厚い文法書がないのなら、今こそ敢えて購入する機会かもしれません。もしもその文法書の内容が全てあなたにとって既知のことであれば、あなたは正しい文法を身につけていると自信をもって良いことになります。もしも未知の知識があれば、発見できて幸運です。早速穴を埋めましょう。そうしてまた一つ賢くなっていく、英語の勉強とはそういうことの繰り返しなのです。

堂本秋次
実務翻訳者、プロマジシャン。英検1級、国連英検A級、TOEIC965を保有。大学時代は、ネイティブスピーカーの教授の指導のもと、言語学を専攻していた。医学、自然科学等を専門とする多芸多才な翻訳者。 詳しいプロフィール / 記事一覧

 - 資格試験