学ぶとは、マネることである。

【レビュー】英文翻訳術:翻訳家を目指す学習者が自習で翻訳の技術を会得するための本

      2016/12/25

翻訳者を目指す人が翻訳の技術と心がまえについて知ることができる本です。

英文翻訳術 (ちくま学芸文庫)

翻訳の技術を総合的に学ぶことができる

翻訳の技術を学ぶためには、翻訳家の先生に弟子入りして、技術を見よう見まねで習得するという方法がほとんどでした。翻訳を志願する人が増えて、翻訳スクールや通信講座などが世の中にたくさん溢れている中で、翻訳の技術を総合的にまとめた本があまりなかったことから本書の企画が始まりました。

雑誌「翻訳の世界」の編集長のアイディアから始まり、1980年から17回にわたって掲載されて記事をまとめて、加筆・改正されたものが本書です。翻訳の勉強をしたい人がスクールに通ったり、弟子入りをしなくても翻訳の技術を学び、自分で勉強ができるように工夫されています。

英文法の枠組みを利用した翻訳技術の組織化

英文法で名詞、動詞、代名詞とそれぞれの品詞ごとに解説がされるように、本書でも品詞ごとに翻訳する際に気をつけたいポイントについて解説がされています。そうすることで翻訳の技術を組織化して学習者に伝えることができる仕組みになっています。

通常の英文法に出てくる英文の和訳というレベルではなく、日本語に訳しにくい英文を例文に使用して、翻訳をする際に気をつけたいポイントの説明がされています。英文を直訳したものから発想の転換をして、どのような考え方の過程を経て、最終的な翻訳文にしていくのかを順序立てて丁寧に解説しています。

著者が翻訳家として積んできた経験を生かして、どうやって自分が翻訳をしているのかを分析しています。品詞ごとに分かれている本書を読み終えたときには、直訳ではなく読みやすくわかりやすい翻訳をする技術が身についていくことでしょう。忘れてはならないのは、本書を読んで翻訳がすぐできるようになるのではなく、翻訳家を目指す人の道しるべとなるものです。

翻訳者へのアドバイスもある

終章では著者から翻訳者を目指す人へのアドバイスがあります。英語を知る、日本語を習う、翻訳の仕事を愛すると3つのアドバイスはどれもよく語られるもので、翻訳者を目指す人ならすでに知っていることでしょう。

しかし、実際にこの3つは本当に重要なことです。人より英語ができるからといって誰にでも翻訳ができるのではありません。英語はこれだけできたら良いという基準もなければ、翻訳者として仕事をしていく以上、一生英語の勉強を続けていかなければなりません。

知らない語句は尽きることがありません。語句の意味が分かっても文化的背景を知らないと理解ができない内容の英文に出くわすこともあるでしょう。そのたびに調べて、学んでいくのが翻訳の仕事です。

もちろん日本語の力も磨いていく必要があります。いくら内容が理解できたとしても、それを的確にわかりやすい日本語にすることができなければ、読む人には内容が伝わりません。生涯、英語と日本語を勉強し続け、翻訳の仕事を続けていくにはこの仕事を愛していなければきっと難しいでしょう。

Tomomi
関西外国語大学卒の実務翻訳者。TOEICスコア985を保有。ビジネス文書からWebサイトまで幅広い分野の翻訳を手掛けている。読む、書く、聞く、話すの各技能はすでにビジネスレベル。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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