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【レビュー】英語で読む哲学:あのサンデル教授ほか世界の一流哲学者の論文で英文読解力を身に付けられる

   

『英語で読む哲学』は本格的な哲学の文章を題材に英文読解力を伸ばすことを目的とするリーディング教材です。

英語で読む哲学

編者の入不二基義氏は元駿台予備校英語担当であり、名著として名高い『英文解釈教室』の著者、伊藤和夫氏と交流のあった方です。

本格的な哲学を扱うやりごたえ十分な本

本書ではマイケル・サンデルなどの哲学者による5つの哲学英文が収録されており、その解説という形式を取っています。

収録英文が少ないと思われるかもしれませんが、学習者向けのリライトなどは一切されておらず、しかも抽象的な概念を扱う哲学がテーマのかなり長い英文ばかりですのでやりごたえは十分です。

十分どころか英文の内容を理解することが大変なので、かなりヘビーな教材と言って良いでしょう。

マイケル・サンデル『正義(Justice:What’s the right thing to do?)』から
入不二 基義『英語で読む哲学』

英文の内容の高さの割に英語自体の解説はさらりとしています。「英文は問題ないだろう」などとして解説を省略し、訳だけ示している箇所もあります。

特に重要語彙が赤字などで示されているわけではないので、語彙力養成や語法習得などの基礎トレーニングのために取り組む本ではないと言えます。

哲学を題材に未知のテーマや難解なテーマの英文読解力を鍛える

解説は英文の内容概説、パラグラフ構成のアウトライン、英文精読の順となっています。英文精読のパートを読んでみると、なんだか高校の現代文の授業のようだと感じられる方が多いかもしれません。

英文の内容概説とパラグラフ構成のアウトライン
入不二 基義『英語で読む哲学』

 
この本の考え方の内容は、文章を読む際の基本手順である以下の手順通りの構成となっています。

1. 英文の内容を大まかに把握
2. 各パラグラフがどういう役割を持っているか分析し英文の構造をつかむ
3. 内容の詳細を読んで細部まで理解する

そのため、本書の解説通りの考え方をたどりながら英文を読む練習をすることで、単なる「英文和訳」で一つ一つの英文を理解するだけではない、英文全体を理解する読解力の飛躍的な伸びが期待できます。

パラグラフ構成のアウトラインメモはとてもシンプルに、英文がどういう構成なのかを示されているだけですが、実際の検定試験などの会場や会議前などにはこの程度のメモで済ませるのが現実的でしょう。

英文を現代文のように読むということは、リーディングの分野において英語学習者が第一に到達すべき目標点です。

単に英文を細かく品詞分解し、和訳して一つ一つの文章はわかったけれど、英文全体として何を言っているかわからなかった、ということは通常の読書とは言えないからです。

哲学というわかりにくいテーマを題材に英文構造を把握する訓練を積むことは、ある程度なら自分の知らないテーマの文章、または既存概念から外れた視点に立って書かれた文章に当たったときの対応力を磨く練習としてぴったりです。

哲学が苦手な人は頭の体操と思って取り組みましょう

哲学の定義は時代によって、国によって、また人によって様々で意味をただ一つに定めることはできませんが、少なくとも「思考や概念を論理的に明晰化する」ということが根本にあります。

これだけでも哲学にアレルギーを持っている方はわけがわからないと考えて敬遠してしまうかもしれませんが、要は「物事の本質を根本的に、論理的に、既成概念にとらわれずに考えてはっきりさせる」ということです。

あまり難しく考えずに頭の体操だと思って取り組んでみてくださいというのは、何を隠そう筆者が重度の哲学アレルギーを持っており、大学の一般教養課程を一度落とした時にいただいたアドバイスです。

既存の当たり前と思われている概念を一度疑って根本から考え直すという思考法をよく行う分野ですので、そういう切り口もあるのか、という程度の頭の使い方で、あまり難しく考えずに読んでみることも良い方法です。

標準語彙を習得していて、英文読解力を高めたい人向け

本書の解説では語彙の解説などはかなりあっさりした記述になっていますから、語彙力レベルに不安がある人が取り組むのには少々敷居が高いと言えます。

読みこなすには英検準1級程度の語彙力は欲しい
入不二 基義『英語で読む哲学』

目安としてはTOEICスコア700程度、英検準一級程度の語彙力はあるというレベル以上の方向けでしょう。

TOEICでも英検でも、これ以上のレベルはただ単に語彙を知っている、英語が聞き取れるだけではなく、「知らないテーマにぶつかったときに上手く対応できる力」もある程度問われるレベルになってきます。

そのため、難解なテーマを扱った本格的な論文や記事に多く当たることも学習者として必要なトレーニングメニューになってきます。このレベルの人たちには本書のように一見難解なテーマを解説しているリーディング教材はうってつけです。

まとめ

  • 本格的な哲学論文を解説したリーディング教材。
  • 長くやや難解な5つの英文で読解力を養成する。
  • 語彙解説などはあっさりなので、標準的な語彙を身に付けてから取り組むと良い。
  • ハイレベルな英文読解力を身に付けたい人向け。
さかえ
上智大学法学部卒のビジネスマン。大学在学中は、純正日本人でありながら帰国子女率80%の上級英語クラスに所属していた。TIME誌、Newsweek誌は辞書なしで読解可能。愛読誌は『The Wall Street Journal』『The Economist』。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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