学ぶとは、マネることである。

40ヶ国語をシャドーイングで習得したアメリカ人言語学者『Alexander Arguelles(アレキサンダー・アルゲレス)教授』の勉強法

      2017/03/26

外国語を習得しようと考えたとき、それについて直に師事できる人が居れば幸運です。しかし、必ずしもそのような人が身近に居るとは限りませんので、その場合は自分自身で勉強し習得していく必要があります。

そのときに問題になるのが「どうやって勉強したら良いか」でしょう。様々なメソッドや学習方法、学習ツールが存在しますが、その中でもアメリカの言語学者「Alexander Arguelles教授(アレキサンダー・アルゲレス)」の方法は特に参考になるかもしれません。

Alexander教授とは

日本ではほぼ無名で、滅多にメディアに取り上げられることがない人物ですが、もしも言語を習得したいと考えるなら彼から学ぶことは多いでしょう。彼は海外の言語で書かれた書物をそのままの言語で読みたいという思いから、およそ40もの言語を独学で習得したという人物なのです。

この言語の習得というのは単に日常会話ができるとかいくつかの言葉を知っているという程度ではなく、本を読むのにほとんど支障が無いレベルの学習到達度で、非常に高い水準で広範囲の言語を習得していると言えます。

ここで言う学習到達度とは、彼自身が、「何カ国語くらい話せるのか」と問われることがあまりに多かったことから編み出した一種のスケールであり、以下のような指標に基づいています。それぞれ、1ページに400 wordsの単語が載っていると仮定しています。以下、1ページごとに知らない単語がどれくらいの頻度で出てくるかをまとめたものです。

90.00%:1ページに40単語
91.00%:1ページに36単語
92.00%:1ページに32単語
93.00%:1ページに28単語
94.00%:1ページに24単語

以上は、テキストのおよそ1行ごとに知らない単語が1つ出てくるレベルです。以下、更に学習が進んだ場合を見てみましょう。

95.00%:1ページに20単語
96.00%:1ページに16単語
97.00%:1ページに12単語
98.00%:1ページに8単語
98.25%:1ページに7単語
98.50%:1ページに6単語
98.66%:1ページに5単語
99.00%:1ページに4単語

95%、96%はそれぞれ2行ごとに知らない単語が出てくる計算で、以降はそれぞれ、3行ごと、4行ごと、5行ごと、6行ごと、7行ごと、8行ごとに知らない単語が出てくる計算です。

99.33%:1ページに3単語
99.50%:1ページに2単語(200単語のうち199単語は知っている)
99.66%:1ページに2単語(300単語のうち299単語は知っている)
99.75%:1ページに1単語(400単語のうち399単語は知っている)
99.80%:1ページに1単語(500単語のうち499単語は知っている)
99.83%:1ページ半に1単語(600単語のうち599単語は知っている)
99.86%:1ページ半に1単語(700単語のうち699単語は知っている)
99.87%:2ページごとに1単語(800単語のうち799単語は知っている)
99.88%:2ページごとに1単語(900単語のうち899単語は知っている)
99.90%:2〜3ページごとに1単語(1000単語のうち999単語は知っている)
99.91%:3ページごとに1単語(1100単語のうち1099単語は知っている)
99.92%:3〜4ページごとに1単語(1200単語のうち1199単語は知っている)
99.9X%:知らない単語は時折、偶発的にしか散見されない

このスケールは、自身の学習到達度を測定するのにも有効なので覚えておいて損は無いでしょう。ちなみに、彼が学習した言語の中で、最も精通していないサンスクリット語でも学習到達度は93.0%となっています。このことからも、彼が非常に勤勉かつ妥協を許さない真摯な学習者であることが伺い知れます。

Alexander Arguelles教授の学習方法とは

では、如何にして彼はそのような言語力を手に入れたのでしょうか。なんと彼は、その方法についても惜しみなく公開しています。その方法とは、「シャドーイング」と「写字法」です。

シャドーイングについて

シャドーイングとは、音声を耳で聞きながら、それの後を追うように実際に口で発声する学習方法です。

このシャドーイングが英語学習に効果的であるという話は、おそらく耳にしたことがあるでしょう。しかし、実際に継続してシャドーイングを練習に取り入れているという人は多くないのではないでしょうか。

Alexander教授も言っていますが、受動的な学習ではなく、能動的に学習しつつ、長期的に、自身で学習のペースを整えることが最も重要です。この機会にAlexander式のシャドーイングを身につけ、本気で外国語を習得してみるのはいかがでしょうか。

Alexander式のシャドーイングについて重要な点は、主に3つです。

1. 屋外を、できる限りきびきびと歩く
2. 姿勢を正し、それを維持する
3. 大きな声で、はっきりと発音する

実際にAlexander教授が大学などで言語学習の講師を行う際、当初多くの生徒は1から3のうち全てを満たしたシャドーイングを行うことはできなかったとのことです。それは、動きながら言語を学ぶというのがどうにも腑に落ちず、黙って座って学習する方が好ましいとほとんどの学生が考えるからであるようでした。

この方法に従って学習する場合、上記の1〜3のポイントを少しでも妥協すれば、その結果を大きく損なうと言われています。Alexander式の正しいシャドーイングのフォームを形成するのには、実際に彼のもとで指導を受けた人であっても短くとも1ヶ月は掛かったと言われており、実際に実行するにはかなりの努力が必要になるでしょう。

このシャドーイングには3つの段階があり、1段目、3段目では実際の文章を見ずにシャドーイングし、第2段階では聞いている内容がそのまま書かれたもの(原稿や本など)を見ながらシャドーイングするのが良いとされています。第1段階では、その話されている内容よりも音に注目しましょう。徐々にゆっくりと、自分が何を言っているのかが分かるようになっていきます。この時に用いる本は、左側に音声内容が、右側に注釈付きで訳が載っているものが望ましいとされています。

以上をまとめると、以下のようになります。

1. Alexander式シャドーイングを行う際は、正しい姿勢と手順を踏むこと
2. 適切な学習素材と機材を用いること(ヘッドホンよりイヤホンの方が望ましいとされています)
3. 規律的かつ継続的に実践すること(15分程度の時間続けるのが望ましいものの、5分〜10分くらいから始めてもよく、最長で30分までなら続けてOKです。これを1日の間に決められた回数、決められたインターバルを置いて実行するのが良いとされています)
4. 繰り返し学習することと新しい学習素材に取り組み始めるバランスを鑑みて、自分自身の学習ペースを適切にコントロールすること

写字法について

シャドーイングに比べて写字法はあまり聞いたことがない手法かもしれません。Alexander式写字法の方法は次の通りです。

1. 声を出してセンテンスを読む。
2. センテンスを書き写しながら、それぞれの単語を読み上げる。
3. センテンスを書き写したら、もう一度声を上げて読む。

この訓練の目的は、ひとえに「ゆっくりと、詳細な点にまで意識を向けること」であると言われています。文法または語彙の上で知らない事柄が無いかどうか確認する段階でこの訓練を行うと効果的です。

一般にこれを実践しようとすると、一連の流れを速く行いすぎる他、言葉に出さずに転写したり、充分に注意を払わないまま書き写したりする傾向にあるとされています。しかし、上記に従って丁寧に行うことで、中級レベルから上級レベルの学習者がその知識を洗練する上で非常に効果が高いとAlexander教授は述べています。また、学習の初期段階においては、センテンスを訳す際に音読することで似たような効果が得られると言われています。

こちらのトレーニングの理想的な時間も15分で、15分もあれば1ページ分くらいを転写することができるであろうとAlexander教授は言っています。

Alexander教授の学習哲学

彼には学習に関する哲学があります。最後に、その部分について引用してみましょう。

 I have taken the comparative and interdisciplinary nature of my own formation very much to heart and I truly believe that the Humanities can only be approached in a holistic fashion. I have never wanted to be anything but a scholar, and by that I do not mean merely an expert in some sub-field of fragmented knowledge, but rather someone who studies all the time so as to build an encyclopedic mind. I am engaged upon a life-long quest for learning in the sense of continuously challenging myself to expand my horizons and the study of languages is my passport.

私は、比較的かつ複数の学問に精通しているという己の在り方の核を深く心に留めており、人間というものを研究しようとするならば、総体的なアプローチによるものでなければならないと誠に信じている。私は学者以外の何者にもなるつもりはなかったが、それの意味するところは単に断片的な知識による副領域にのみ精通したいということではなく、常に広い知識を身につけるために学びたいということである。私は、常に己自身に挑戦する感覚を以て、私の限界を拡張するべく人生をかけて学びを探求している最中にあるのであり、言語の研究は、私にとってのパスポートなのだ。

堂本秋次

実務翻訳者、プロマジシャン。英検1級、国連英検A級、TOEIC965を保有。大学時代は、ネイティブスピーカーの教授の指導のもと、言語学を専攻していた。医学、自然科学等を専門とする多芸多才な翻訳者。
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