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【レビュー】テーマ別英単語 ACADEMIC 中級 人文・社会科学編:文系分野の専門的な語彙力と知識を同時に身に付けられる教本

      2017/07/12

文脈主義のボキャビルを提唱する代表的な参考書、『速読速聴・英単語』シリーズで定評のあるZ会出版の教材です。

テーマ別英単語ACADEMIC 中級〈01〉人文・社会科学編

文系分野の初歩的な専門知識を身に付けると同時に、語彙力増強・リーディング力の向上を目的としています。

大学の一般教養講義レベルの内容で学術レベルまで実践力を高める

基本的な構成は同社の『速読速聴・英単語』シリーズや『速読英単語』シリーズと同様に、左ページに英文、右ページに日本語訳となっています。

リーディング型教材ではおなじみの「英和対訳方式」(金融バブル小史)
テーマ別英単語文系中級_01 テーマ別英単語文系中級_02
中澤 幸夫『テーマ別英単語 ACADEMIC 中級 01 人文・社会科学編』

本のタイトルに「中級」とありますが、あなどると痛い目を見てしまうでしょう。本書のタイトルは「ACADEMIC」の方に重点を置いて読んでください。

人文・社会科学編というタイトルの通り、文系の範囲であれば政治学・法学から言語学、心理学、宗教など、あらゆる分野の記事を収録しています。

収録されている概念の難易度は、おおよそ大学の一般教養講義レベルの知識が概説されており、その分野に関して予備知識やフレームワークへの慣れがないと内容が分かりにくい記事も収録されています。

そのため英語力自体はかなり高いレベルに到達している人でも、解説や日本語訳を一切読まずに英文を読むと、専門外の分野について「英文は読めるけれど内容が一読では理解しきれない」という事態が起こり得ます。

そのくらいのレベルの英文が収録されているということを念頭に置いて、じっくりと取り組むべき本です。

各分野の冒頭にはテーマの概説が準備されている

本書は政治学・法学などの分野ごとに7章構成となっています。各章の冒頭には扱う英文の内容に沿って、概念理解のためのテーマ概説が準備されています。

「第3章 経済学・経営学」のテーマ概説
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中澤 幸夫『テーマ別英単語 ACADEMIC 中級 01 人文・社会科学編』

本書のように英文どうこうよりも、そもそも扱っている内容のレベルが高めの学習書全般に言えることですが、こうしたテーマの概説は最初に読みこんでおくと良いでしょう。

本文の英文に入る前に、概念やフレームワークを大まかにつかんでおくことで、英文の理解がしやすくなります。それによって内容が高度な英文に挑戦する場合でも挫折しにくくなるためです。

また、「知ってますか?」のコーナーで、下の画像の通り周辺知識も解説されていますから、英文の内容を理解したらこのページも読んでおくことでその分野にある程度精通する糸口はつかめます。

対象テーマの周辺知識を習得するコーナー「知ってますか?」
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中澤 幸夫『テーマ別英単語 ACADEMIC 中級 01 人文・社会科学編』

限られたページ数の中で、文系分野のほぼ全範囲を扱っているため、どうしてもテーマは絞られています。本書を読んだ後、興味を持った分野を掘り下げる糸口として周辺知識解説のページを利用すると良いでしょう。

英語で専門知識を勉強することに慣れたい学習者向け

同じZ会のシリーズで「速読速聴・英単語シリーズ」が一般的な英語語彙を広く身に付けるためのゼネラリスト養成のための本とするならば、本書はスペシャリストを養成するための本と言えます。

言い方を変えるとボキャビルを主目的として取り組むべき本と言うよりも、「英語で専門知識を学習することに慣れるための本」と言えます。

扱っている範囲が文系分野に限られており、さらにそれぞれの分野の中でテーマをある程度絞って高度な概念や事象を扱っているため、どうしてもカバーしている範囲がある分野の特定の範囲という構成になっています。

また、専門用語は多く解説されていますが、一般的な語彙に関してはそれほど高いレベルのものがトピック語彙として収録されているわけではありません。専門用語以外は、TOEICスコア700前後取れている人であれば、すでに知っている語彙が多いと感じるでしょう。

そのため、短期間でTOEICのスコアなどを上げるための本としては速読速聴・英単語シリーズなどの類書と比較するとやや不向きと言えます。

英語を勉強するというよりも、すでにある程度の英語力を有している人が専門的な分野で通用する実践レベルのリーディング力や語彙力を養成するために使う本と言えますから、じっくりと取り組みたい一冊です。

さしあたりメインの目的がTOEICや英検などであれば、気分転換のために興味のある分野だけ読んでおくという使い方をおすすめします。

ただし、大学生などで十分に勉強時間が取れる人、または本書収録されている英文の専門分野に興味があり、ぜひとも関連する英書にチャレンジしたい人は本書をメインで使うことは良い選択肢です。

大学生であれば例えば履修している一般教養講義に関連する分野を読んで英語学習と教養学習を同時に進める方法があります。また、文系の専門分野いずれかに興味がある方は本書を読むことで専門的な英書の構成やレベルはどういうものなのか、イメージをつかむことができるでしょう。

いかにも語学書といった感じのリスニングCDが付属

音声の吹き込み速度は約140語/分と標準的です。いかにも語学書といった感じの朗読で、クリアに発声されているので、聴き取りにくさは感じません。

テーマ別英単語文系中級_CD
中澤 幸夫『テーマ別英単語 ACADEMIC 中級 01 人文・社会科学編』付属CD(2枚組)

しかし、記述されている内容自体が大学講義レベルなので、一聴しただけで理解できる方は少ないでしょう。日本語訳を読んだり、英文を何度も読んだり聞いたりして内容理解に努めてください。

まとめ

  • 専門英語に特化した英単語・リーディング教材。
  • 文系分野の英文を政治学・法学から宗教学・心理学まで収録。
  • トピック語彙には専門用語の解説が多いが、一般的語彙のレベルはさほど高くはない。
  • 文系の専門分野で本格的な読書をしたい場合はその準備としてじっくりと取り組むべき。
さかえ
上智大学法学部卒のビジネスマン。大学在学中は、純正日本人でありながら帰国子女率80%の上級英語クラスに所属していた。TIME誌、Newsweek誌は辞書なしで読解可能。愛読誌は『The Wall Street Journal』『The Economist』。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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