学ぶとは、マネることである。

翻訳者・堂本秋次が教える『良い英語長文の書き方』

      2017/10/22

英語学習をしていれば、単文の作り方や日本語から英語への変換のやり方については学ぶことができます。しかし、英語長文の書き方については意外と学ぶ機会が無いのではないでしょうか。

英語長文を書くというのは、単に単文を並べていく作業ではありません。それぞれの文章が独立しないよう、並んでいる文章は一定の流れを維持していなければならないのです。ここでは、学ぶ機会の少ない「英語長文の書き方」について、2つのポイントに絞って考えてみましょう。

同じ語彙を繰り返し使わないようにする

以下は、2016年2月26日のGuardian誌からの引用です。

In Japan the falling cost of fuel kept inflation at 0%, well below the central bank’s target of 2% and highlighting the daunting task policymakers face in attempting to lift Japan out of stagnation.

In a bid to end speculation about a possible devaluation of the yuan, Zhou added that there was no basis for persistent depreciation of China’s yuan and that foreign reserves would be kept at “adequate” levels.

China has cut interest rates six times since November 2014 in an effort to stimulate its economy which last year grew at its slowest rate for 25 years.

(http://www.theguardian.com/business/2016/feb/26/chinese-central-bank-chief-hints-at-more-stimulus-for-slowing-economy?CMP=Share_iOSApp_Other)

連続しているものではありませんが、この3つの文章は上記URLの記事の中で用いられているものです。それぞれのセンテンスで、in attempting to、in a bid to、in an effort toと、非常に似通ったイディオムが用いられていることに気がついたでしょうか。

言うなれば、全て同じイディオムでまとめてしまっても構いません。3つのセンテンスの該当部分全てがin an effort toでも、文法的・意味的には全く構わないのです。しかし、敢えて異なるイディオムを用いています。それは何故かというと、ネイティブは同じ表現や語句の繰り返しを避ける傾向にあるからです。

良い英語長文の第一のポイントは、このようにして同じ表現を繰り返さないように工夫することであると言えます。「〜するために」と言いたいとき、in order toだけを用いるのではなく、so as toやaiming to、for the purpose ofなど、複数の表現を持っている必要があります。

旧情報から新情報への移行を意識する

同じく、2016年2月28日のGuardian誌から、ドナルド・トランプ氏とマルコ・ルビオ氏のやり取りに関する記事を抜粋してみましょう。

Marco Rubio took the fight to Donald Trump on Thursday night. With assistance from Ted Cruz, the Florida senator unleashed an attack on Trump’s business record and policy acumen that has the potential to shake up the Republican presidential race.

(http://www.theguardian.com/us-news/2016/feb/25/donald-trump-marco-rubio-ted-cruz-republican-debate-houston)

上の文章は、URL先の記事の第1パラグラフです。このパラグラフの意味の流れを分析してみましょう。

まず、マルコ・ルビオ(Marco Rubo)氏が主語として登場し、この文章の中心人物が彼であることが示されています。次に、took the fightが続いており、その相手がドナルド・トランプ(Donald Trump)氏であると書かれています。そして、このfightが行われたのは木曜日の夜であるということで第1文が終わっています。

次の文章では、(テッド・クルーズ(Ted Cruz)氏の)サポートもあって、Floridaの上院議員(であるマルコ・ルビオ氏)が何かを解き放ったことが分かります。解き放ったのは、トランプ氏のビジネスに関する記録への攻撃や、政治上への鋭い見識でした。この政治上の鋭い見識が、共和党の大統領選を揺るがす可能性を秘めている、としてパラグラフは結ばれています。

このパラグラフが伝えたい内容をまとめると、「マルコ・ルビオ氏がドナルド・トランプ氏に対して猛烈な批判を行い、自身の政治的見解を述べたことで、大統領選が新たな展開を見せるかもしれない」ということになります。更にまとめるなら、「マルコ・ルビオ氏の発言により、大統領選が新たな展開を見せるかもしれない」とまで要約できるでしょう。

ここで意識したいのは、このパラグラフ内の情報の順序が非常に理に適っているということです。大統領選の2人の候補者が熾烈なアピール合戦を繰り広げたという情報(アメリカ人であれば誰でも知っている情報)から、それについてはマルコ・ルビオ氏が優勢であったことが示され(誰でも知っている情報からの発展した情報)、その発言内容は今後の大統領選を揺るがす可能性があるものであったこと(最も新しい情報)、へとつながっているのにお気づきでしょうか。

このように英語においては、既存の情報から新しい情報へと文章が進むのが一般的です。つまり、文章の後ろの方にある情報ほど新しく、故に基本的には価値が高く、筆者がその文章で提供したい内容になっていることが多いのです。この点を踏まえると、英作文をする際には基本的な情報から徐々に発展的な内容へと情報が流れていくことを意識することが重要になるでしょう。

こうしたことから、以下の英文が稚拙であるように感じられる理由も理解できるでしょう。

I went on a picnic yesterday.
I enjoyed very much.
I want to invite my friends next time.

第1文では、「私」が「ピクニックに行った」という情報の流れができています。しかし、第2文では、また「私」から情報が始まっているのです。第2文の最後の情報は「楽しかった」ですが、第3文の開始はまた「私」になっており、何度も「私」という情報に戻されてしまうため、どうにも読んでいてリズムが悪く、稚拙であるように感じられてしまうのです。そこで、情報の順序を考慮し、次のようにしてみるとどうでしょう。

I went on a picnic yesterday and enjoyed myself very much, so I want to invite my friends next time.

この文章では、「私」が「(昨日)ピクニックに行って」「楽しませた」「私を」ので「私」は「(次回は)友達を連れていきたい」となっています。「私、ピクニック、楽しい、私、私、連れていく、友達」という情報の順序になっているので、理解が阻害されることがありません。

まとめ

もちろん、こうしたことはあくまで一般論に過ぎず、文体やその人のスタイルによる例外は数多く存在します。例えば仮主語のitなどは、本来は最も新しい情報となるはずの補語の先取りをしていますので、この順序を破壊している例と言えるでしょう。仮主語のitが有効なのは、情報の順序を乱すことで注意を喚起できるからなのです。つまり、これは「こうするのが正しい」というようなことではありません。

それでも、普段から分かりやすい長文を書くように意識することで、貴方の文章が魅力的に映りやすくなるのは間違いないでしょう。崩した文体で書かれた文章もまた魅力的ですが、文体を崩すにはスタンダードな文体を学ぶ必要があるのです。ルールを知らなければ、その破り方も分からないのですから。

堂本秋次
実務翻訳者、プロマジシャン。英検1級、国連英検A級、TOEIC965を保有。大学時代は、ネイティブスピーカーの教授の指導のもと、言語学を専攻していた。医学、自然科学等を専門とする多芸多才な翻訳者。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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