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【レビュー】英語で読む坂本龍馬(上):明治維新の立役者・坂本龍馬の生涯を英語で描く

   

 「英語で読む坂本龍馬(上)」はあまりにも有名な明治維新の立役者、坂本龍馬の生涯を描いたリーディング教材で、上・下巻の構成になっています。

英語で読む 坂本龍馬(上)

 上巻は「よばあたれ(寝小便垂れ)」、泣き虫と呼ばれた幼少期から、日本を揺るがす一大事件である薩長同盟を成立させる端緒となる西郷隆盛との出会い前後までを収録しています。

現代人の志に訴えかける坂本龍馬

 坂本龍馬は江戸期末、一般的には幕末~明治維新期と呼ばれる激動の時代を生きた自由人です。福山雅治主演の大河ドラマ「龍馬伝」でも最近取り上げられましたし、司馬遼太郎の「竜馬がゆく」は何度も版を重ねられ、多くの人に読み継がれています。

 明治維新がなければ今の日本はなく、日本は西欧列強の植民地にされていたかもしれないという歴史研究家もいるほど、現代日本にもつながる一大事件でした。明治維新は、幕府側と倒幕側の対立、尊皇攘夷派と公武合体派の対立など考え方の違いによる相違がありましたが、それぞれの派閥に所属する人々それぞれが日本を守るため、より良い国を創るために私心を捨てて行動したところに、現代においても人々を惹きつける要素がある事件であると思います。

 そのような中で坂本龍馬はひとり異彩を放つ登場人物です。彼の身分は「脱藩した浪人」。つまり強力な後ろ盾を持たない自由人のまま、犬猿の仲であった長州と薩摩の二雄藩の同盟を成し遂げ、明治維新の原動力の一つとなったわけです。

土佐藩を脱藩し、江戸で幕臣・勝海舟と出会う(Chapter 6 日本第一の人物)
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ロミュラス・ヒルズボロウ『英語で読む坂本龍馬(上)』

 現代でも彼を尊敬する人は多く、武田鉄矢がグループ名を龍馬が結成したものと同名の「海援隊」にしたことなどは特に有名ですね。個人の志はここまで多くの人を動かすものだということが分かる点、社会や経済が成熟期に入ってやや閉塞感が漂う現代人が、改めて志を高く持つきっかけになる人物の一人です。

 そのため、本書は坂本龍馬ファンの英語学習用だけではなく、仕事・勉強・人間関係などにややお疲れの方の心のエネルギー充電のためとして読んでみることも面白いと思います。

平易な語彙で書かれたわかりやすい英文でリーディング学習

 本書は英語で書かれた坂本龍馬の伝記小説「Ryoma: Life of a Renaissance Samurai」を編集しなおした本で、メインのストーリーの英文の合間に二人の侍の対話文を挿入するという構成となっています。

Ryoma: Life of a Renaissance Samurai (English Edition)

 対話形式の部分は、龍馬を知らない若い侍Aの質問に、龍馬と同時代に生きた侍Bが答えるという形です。対話形式の良さは、質問者の発言や合いの手が、それまでに回答者が話した内容をまとめる効果や次の話を促す効果があり、話の流れが取りやすくなることにあります。

ストーリー中の疑問点は二人の侍の対話により理解しやすくしている(Chapter 4 尊王)
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ロミュラス・ヒルズボロウ『英語で読む坂本龍馬(上)』

 この点はパラグラフリーディングの練習をする際に「質問者の発言に注意して読む」という基本練習をしながら読み進めるのに最適ですし、自分で英文や和文のストーリーを書く際にも構成の基本の一つとして参考にしていただきたいところです。

 また、各章の冒頭にはイントロダクションがあり、これも話を分かりやすくしています。さらに、当時の入り組んだ時代背景や勢力図は冒頭に概略が人物相関図として書かれており、これも話を分かりやすくする一助になります。

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ロミュラス・ヒルズボロウ『英語で読む坂本龍馬(上)』

TOEICスコア650以上の中級者ならスラスラ読めるレベル

 英文のレベルは高すぎるということもなく、語彙レベルも標準的です。TOEICスコア650オーバーの中級者以上であれば、人名や地名などの固有名詞に注意しながら読めばスラスラと読めるレベルです。坂本龍馬ファンなら引き込まれて一気に読んでいけるでしょう。

 本書では英文と和訳は異なるページに書かれているため、例えば左ページが英文、右ページが和訳のように左右対照しながら読む構成の本に比較するとやや和訳対照がしにくくなっていますが、これは中級者が本格的に英文を読む訓練に最適な構成とも言えます。

 初学者でも辞書を引きながら、語注や和訳を参照しながら読めばついていけないレベルではないので、リーディングの訓練として初級者や高校生、特に日本史を学んだことのある人にお勧めです。

シャドーイング学習にも使えるゆっくりとした録音のCD

 吹き込み音声の速度を測定したところ、約120~130語/分でした。ナレーターは全編に渡って男性が務めています。英文には、さほど難しい語彙は使われていないので、TOEIC600点前後の中級者にはうってつけのリスニング素材といえます。比較的ゆっくりとした聞き取りやすい音声なので、単純なリスニング学習だけでなくシャドーイング学習にも適しています。

英語で読む坂本龍馬_CD
ロミュラス・ヒルズボロウ『英語で読む坂本龍馬(上)』付属CD(1枚組)

レベルに関係なくモチベーションアップが期待できる

 英語学習のみならず、仕事などをする上で最も大事なのはモチベーションを持つこと、そしてモチベーションの維持です。

 本書は坂本龍馬ファンならまるで小説を読んでいるように引き込まれる内容ですが、これまでに詳しく坂本龍馬について書かれた本を読んでこなかった方にも、前述の「強力な後ろ盾を持たない自由人の立場で大きなことを成し遂げた」人物について知ることで、モチベーションアップが期待できる内容でもあります。英語学習者の観点からみると、面白い内容を分かりやすく記述している本書を利用することで、モチベーションを高めつつリーディング力を高める効果が期待できます。

まとめ

  • 坂本龍馬の伝記小説を対話形式にしたリーディング教材の上巻。
  • 語彙レベルは高くないので、初学者・高校生も使える。
  • 幕末ファンであれば多読をしつつモチベーション維持という効果が期待できる。
さかえ
上智大学法学部卒のビジネスマン。大学在学中は、純正日本人でありながら帰国子女率80%の上級英語クラスに所属していた。TIME誌、Newsweek誌は辞書なしで読解可能。愛読誌は『The Wall Street Journal』『The Economist』。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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