学ぶとは、マネることである。

翻訳者・堂本秋次の『英作文を使用した英単語暗記術』

      2017/07/19

卑しくも名刺にTranslator(翻訳者)などと書いていると、「私も英語を覚えたいのですが、単語がどうしても覚えられないんです」などと相談を受けることがよくあります。詳しく聞いてみると、文法についてはなんとなく理解しているものの、実際に会話をしようとすると単語が出てこない、知らない単語が多すぎて長文を読もうと思っても諦めてしまう、といった具合のようです。

僕はそんなとき、「もしも本気で英語を勉強したいと思うのなら……」と前置きをしてから、ある勉強方法を伝えてきました。仮に今現在の僕の単語力を10,000単語程度だとすれば、そのうちの9割は、これから紹介する方法で培ったものです。

英単語ノートを自分で作る

僕が自分で実践してきた英語勉強法で特筆するようなものがあるとすれば、間違いなくこれです。

まず、市販の英単語帳を買ってきます。僕の場合は常に英検を一定の目標ラインとしていましたので、英検対策シリーズの英単語帳や、狙っている英検のレベルに相当するTOEIC対策と銘打った単語帳を用いていました。

ノートの作り方1:自分で英語の定義づけをする

自分専用のノートを用意し、そのノートの1行目に、単語帳に従って、覚えたい単語を書きます。たいていの単語帳はアルファベット順になっているので、ここでは仮に、最初の1つにambidextrousという単語が来ていたとしましょう。この場合、まず、ノートの1行目に、このように書きます。

ambidextrous [adj]

[adj]とは、adjective、つまり形容詞のことです。そして、その単語の意味を単語帳で確認します。ambidextrousは、たいていの場合、日本語で言うなら「両利きの」などと書かれているでしょう。

これを確認したら、それを自分なりに英語で表現してみます。つまり、ambidextrousという単語を使わずに、「両利きの」という表現を作ってみるのです。これは必ずしも正しい必要はなく、この時点では自分が分かれば良いので、例えばこのように書いてみましょう。

ambidextrous [adj] right-and-left-handed

「右利きの」がright-handedで、「左利きの」がleft-handedですから、つなげてこのように表現することが可能です。

また、ambidextrousには「非常に器用な」という意味があるので、次のように付け加えてみましょう。

ambidextrous [adj] right-and-left-handed, greatly good at doing something with the fingers or hands

これにより、まずその単語を英語の意味で理解できるようになります。そのようにインプットすることで、英語を英語のまま理解するための思考回路を作るのが目的です。また、この段階で、類義語や反対語などもまとめておきます。必要に応じて、訳の所に書いておきましょう。

ノートの作り方2:例文を作る

ここまで進んだら、次にいよいよ例文を作ります。このとき、できるだけ自分が扱える文法やその他の単語を総動員して、可能な限り難しい例文を作るようにします。例えばここでは、次のような例文を作ってみましょう。

ambidextrous [adj] right-and-left-handed, greatly good at doing something with the fingers or hands
– Ambidextrous as he is, his habit to fail to finish work at last always spoils his reputation, which is otherwise really great.
(彼は非常に器用ではあるものの、画竜点睛を欠く癖が災いしていつも評判に疵をつけている。それさえなければ本当に良い人なのだけれど)

例文では、[形容詞] as S is(Sは〜だけども/なので)や、関係代名詞、そしてotherwiseの文中の副詞用法(それ以外の点では)を用いています。このようにして、単語を覚えながら、同時に自分が覚えている文法事項も確認することができるのです。

例文を作るとき、最初は日本語で例文を思い浮かべてそれを英文にしても良いですが、できるだけ英語のまま英作文できるように心がけていきましょう。

これを、1冊の単語帳の全ての単語について行います。もちろん、最初は難しく感じるかもしれませんが、必ずしも難易度の高いことに挑戦しなくても大丈夫です。重要なのは、英単語を自分なりに英語で理解し、他の単語とのネットワークを構築しておくこと、そして自分で例文を作ることで文法知識をおさらいしながら、英作文力を同時に高め、どういった文章で用いられる単語なのかを自分なりに把握しておくことです。最初のうちは1つの英作文をするのに数十分かかってしまうかもしれませんが、慣れれば1つにつき5分程度で行えるようになっていきます。

ノートを作ったら

何日かしてノートのページ数が進んだら、最初の頃の単語をチェックしてみましょう。まず単語のスペルを見て、その単語を覚えているかどうかをチェックし、覚えていなければ自分で作った英語の定義を確認します。

次に例文を確認して、文章中に文法ミスやスペルミスが無いかを確認します。このとき、冠詞と定冠詞の使い分けを間違っていないか、時制は一致しているかなどを確認することで、より完成度の高い英文を書くための注意深さを身につけていきます。そしてこの一連の作業で、確実に自分の中に単語を落とし込むことができるのです。

普段から英語で定義づけし、類義語を思い浮かべるようにする

英単語ノートを作る余裕が無い、という人も居るかも知れません。しかし、そのような人でも、単語帳を覚えるとき、単に日本語を確認するだけではなく、それを英語で言い換えるとどうなるかを意識するのは重要です。そうすることにより類義語や反対語の確認もできますし、どのような単語と相性が良いのかも確認することができるからです。

おわりに:英単語を覚えるという作業

僕が個人的に念頭に置いていることとして、「同じ意味ならば、違うスペルであるはずがない」というものがあります。例えば、therefore、thus、henceはいずれも「従って」などで訳されてしまいますが、もしもどれも「従って」で訳せるのなら、どれか1つだけで良いはずなのです。つまり、therefore、thus、henceには違いがあるということになります。

今回、単語を覚える際には類義語を関連づけて覚えることが重要だとしましたが、決して元々の単語とその類義語をイコールで結ばないでください。必要に応じて英英辞典を引いたりするなどして、その2つは何が違うのかについて自分なりに理解しておくことが重要です。そうすることで、単に試験のために単語を増やすのではなく、生き生きとした単語の使い分けが可能になるのです。

ちなみに、therefore、thus、henceの違いですが、いずれも「従って」の意味があるのを前提とし、thusは “in this way”、henceは “from here”、thereforeは”as a result”に近いニュアンスがあり、henceが最もフォーマルですが、証明問題などではthereforeが用いられます。これは、数学などの分野では、複数の意味がある言葉を用いるのを避けて、意味を1つに絞ろうとするからで、thereforeの意味が、この3つの中では最も狭いからです。

このように、英単語の学習とは暗記作業ではなく、その言葉が持つポテンシャルを最大限に理解し、引き出せるようになる訓練のことなのです。

堂本秋次
実務翻訳者、プロマジシャン。英検1級、国連英検A級、TOEIC965を保有。大学時代は、ネイティブスピーカーの教授の指導のもと、言語学を専攻していた。医学、自然科学等を専門とする多芸多才な翻訳者。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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