学ぶとは、マネることである。

翻訳者・堂本秋次の『英検1級に合格した勉強法』

      2016/04/15

 単刀直入に言って、英検1級の取得に必要なのは、根気と総合的な言語運用能力です。文法や単語をどの程度勉強すれば良いか、ということではなく、どうすれば受かるか、というようなテクニックのことでもありません。

 そのレベルに至るまでに継続して勉強し続けられる姿勢と、身につけた能力を試験で遺憾なく発揮することのできる土壇場の強さが求められているのです。それを大前提として、僕自身が、準1級の合格から1級の合格までの間にどのような勉強をしてきたかについてまとめてみます。

単語力について

 英検1級に必要な単語力は、当初僕が思っているよりも遥かに膨大な量でした。英検準1級には割と余裕を持って合格できたので、単語帳を1つでもやれば、それで充分に1級にも合格できるだろうと考えていたのです。

 事実、英検1級語彙・イディオム問題500(英検分野別ターゲット)などは英検1級に必要な単語力の基礎を固めるのには非常に役立ちましたが、それだけでは全く不十分でした。

英検1級語彙・イディオム問題500 (英検分野別ターゲット)

 そこで、書店に赴き、手当たり次第に「ハイレベル」や「上級者向け」などと謳っている単語帳を手に取り、ぱらぱらとめくって、自分が知らない単語がたくさん収録されているようであれば購入、それを覚える、というのを繰り返していました。

 それまでは覚えるべき単語はノートに記録していたのですが、あまりの単語量の多さに、全てをノートに記録することは諦めました。それまでは、「10個の単語を確実に10個覚える」ように勉強していたのですが、そこからは「100個の単語をなんとなく頭に入れて、そのうちの10か20でも頭に残れば良い」と考えて勉強していたのです。これには賛否両論あるかと思うのですが、個人的には、これが功を奏したように思います。

 ただ、それぞれの単語を覚えるときには類義語や反対語を一緒に覚えるようにし、その単語の意味は自分なりに英語で説明できるようには努めました。また、覚えた単語ともう一度どこかで出会うために、平行して英文の読書量が増えました。ドラッカーを原書で読んでみたり、有名な小説を英語のまま読んでみたりしたのです。そうして自分が覚えた単語にもう1度出会うことで、その単語が確実に自分のものになるような気がしたのでした。

Management: Tasks, Responsibilities, Practices

文法力について

 単語力を伸ばすために生の英語に触れ始めましたが、そうすると必ずと言って良いほど、ある程度の割合で「意味が分からないセンテンス」に出会うようになりました。そうしたとき、一番の理由はそれに用いられている単語を僕がまだ知らないからだったのですが、時に、全て知っている単語のはずなのに理解できないようなセンテンスもありました。そしてこうしたセンテンスこそ、文法力を伸ばすのに重要なものなのです。

 まず、意味の取れないセンテンスを文法的に分解してみます。どの単語がどの単語を形容しているのか、その代名詞が何を意味しているのかについてもう一度考え直します。それでも分からない場合は、知っているつもりの単語が別の意味で使われていないか、何かの暗喩などになっていないか、省略されている表現はないか、といったことについて確認していくのです。

 そうして最終的に自分で納得のいく解釈を得られたときの経験値は、他の学習方法で得られるものとは格別です。こうした自分の文法力で即座に理解できないような文章を1つ1つ確実に研究して解釈していくことで、確かな文法力を手に入れることができます。

 これは参考書の長文問題でも同じで、英語のときに理解できなかった文章は、必ず日本語訳を確認するようにしましょう。そして、どうしてその日本語訳になるのかについて、文法的に考えてみましょう。

リスニング力について

 リスニングについては、英語のニュースやTEDといった生の英語に触れる機会を増やしました。外を移動中に、音楽を聴く変わりに英語でニュースを聴き、自宅では寝る前に必ずTEDを字幕なしで見るようにしました。これについては、今現在も続けている習慣です。ポッドキャストや海外のラジオを聴けるアプリなど、これに用いることのできるツールはたくさんあります。

 リスニングの伸びが良くないと感じたときは、ディクテーションを行うようにしました。1時間か2時間ほど時間をとって、短めのニュースやTEDのスピーチ(3分〜5分程度)を聴き、その内容をペンで紙に書き起こすのです。ポッドキャストなどで配信されているデータには文章データも含まれていることが多く、ディクテーションした内容が正しいのかどうかのチェックは容易でした。これは是非、多くの人に実践して頂きたい勉強方法です。

CD付 究極の英語ディクテーション Vol. 1

2次試験対策について

 英検1級の2次試験では、与えられたトピックに対して即興のスピーチが求められます。どのようなトピックが与えられるかについては全くランダムであるため、自分にとって不慣れなトピックが出てくることもあれば、得意なトピックが出てくることもあるでしょう。

 これの対策としては、普段から色々なことに対して興味を持ち、幅広い語彙を持っておくことが必要です。日本の文化や事件、国際的な立場などをどのように英語で説明するかといったことや、海外の大きな事件などについて自分なりの見解を言えるようにしておくなど、普段からアンテナを広く張っておきましょう。

 その意味でも、ニュースでリスニング力を鍛える他、できるだけ多くの英文を読むようにするのは有効です。そうした英語学習の中で、単語や文法だけでなく、日常的な知識も増やせるように意識していきましょう。

英検1級 面接大特訓

最後に:英検1級取得は目指してはいけない

 矛盾するような言い方になってしまいますが、英検1級を目指して勉強するのなら、英検1級の取得を目標にしてはいけません。

 僕は個人的に、あらゆる資格試験は、根本的に自己満足のために取るものであると考えています。英検1級もその例外ではありませんでした。英検1級を取得したからといって人生が変わるわけでも、英語が話せるようになるわけでもありません。例えば、英検1級を取得していても英語で会話ができない人は、決して少なくないでしょう。それは、英検1級を取得したから英語を話せるのではなく、英検1級を取得しようとして”勉強したから”英語を話せるようになるからです。

 英検1級は、単なる学習の進捗度合いの目安、あるいは対外的なステータスに過ぎません。英検1級を取得していなくても、それ以上の語学力を持つ人も多く居ます。ともすれば、英検の取得を目標とするのはナンセンスです。

 重要なのは、英検1級を取得したいのは何故なのか、英検を取得して対外的なステータスを高めたら、それを何に活かしたいのか、というところなのです。英検1級を取得したその先に何を見据えるのか、そこを踏まえて勉強していくのが望ましいと言えます。そうでなければ、英検1級を取得した時点で燃え尽きてしまうかもしれません。

 かつて僕が大学生だったとき、ネイティブの先生が、ゼミのメンバーにこう尋ねました。

How far will you study English after this?

 ゼミが終わったら、その後は英語はどれくらい勉強するつもりなのか。この質問に、多くの人は「マスターするまで」だとか、「喋れるようになるまで」などと答えていたのですが、僕は思いつくままにこう答えたのを覚えています。

As far as I can.

 英検1級はゴールではなく、次のステップへのスタートラインに過ぎないのです。

堂本秋次

実務翻訳者、プロマジシャン。英検1級、国連英検A級、TOEIC965を保有。大学時代は、ネイティブスピーカーの教授の指導のもと、言語学を専攻していた。医学、自然科学等を専門とする多芸多才な翻訳者。
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