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【レビュー】英語で読む織田信長:茶人・織田有楽斎が大河ドラマのように信長の生涯を語る

      2016/04/04

 英語で織田信長の生涯を描いたリーディング教材です。信長の実弟であり、信長・秀吉・家康の戦国三傑に仕えた茶人・織田有楽斎を語り部として描いています。

MP3 CD付 英語で読む織田信長 Oda Nobunaga【日英対訳】 (IBC対訳ライブラリー)

大河ドラマのように信長の生涯を語る

 英語で読む織田信長では、織田有楽斎の視点からうつけと呼ばれた少年期・青年期から本能寺の変で明智光秀に討たれるまでの信長の生涯が概ね時系列順に語られます。最終章はすでに死亡している信長の独白、という形式で終わります。語り口としては、NHK大河ドラマで毎回流れるような、登場人物の一人の語りによるナレーションのイメージに近いものになっています。

 織田信長は恐らくほぼ知らない人がいないほどの歴史上の人物ですが、このような形式をとることで単なる教科書的な記述にならず、信長の風流人としての一面や浅井長政・明智光秀等の登場人物の心情も描かれていますので、全体の分量からしても大河ドラマのノベライズ版といった形式となっています。

 信長の年表や、親族・家臣・敵対勢力との相関関係も巻頭に表示されていますので、信長について名前だけしか知らなくても登場人物の個人名と関係を把握しながら読んでいけます。

相関図で複雑な人間関係を把握
織田信長_1S 織田信長_2S
西海 コエン『英語で読む 織田信長』

適度な長さの英文で構成された読みやすい英文

 本書は左ページが和文と重要語彙の意味、右ページが英文の対訳形式になっています。

分かりやすい「対訳形式」
織田信長_3S 織田信長_4S
西海 コエン『英語で読む 織田信長』

 英文自体は一文が長すぎたり短すぎたりすることもなく、語彙も難しすぎるということはありません。目安としてはTOEICで500~600のスコアをお持ちの方でしたら不明な語彙を調べたりして読んでいくことは十分可能、スコア700を超えていれば特段語彙が分からないことはないはずです。高校生でも難関大学を受験するレベルに達していれば、ある程度語彙を調べたり和訳を参照したりしながら十分読めるレベルです。

 語り口としての文章になっており、扱うテーマが歴史上の人物ですので桶狭間の戦いや長篠の戦い、本能寺の変等の状況説明、登場人物の心情の描写が語り口調でなされます。この点では単なる英単語の学習・語彙の習得にとどまらず、わかりやすい説明を英語で書く・話す際にどのような語彙を組み合わせていくかの例とするという視点で読むと、長文の構成力も身に付きます。

最大の山場「本能寺の変」
織田信長_7S 織田信長_8S
西海 コエン『英語で読む 織田信長』

 教科書的な記述にはなっていませんが総じて文章の構成はわかりやすく、巻頭にある相関図や年表を参照しながら読んでいけば、英文を読んでいる途中で時系列やどの事件を扱っているか分からなくなるようなことはありません。

 また、本書は7章構成になっていますが、1章~6章の末尾には「TOEIC/ビジネスで役立つ表現」として、その章に掲載されている語彙・表現の中から重要なものを取り上げて解説しています。押さえておくべき重要語彙の主要な意味とは別の使われ方や同意語・類義語、本文中とは別の例文も短文で記載されており、語彙力の幅がつく構成になっています。

TOEIC/ビジネスで役立つ表現
織田信長_5S 織田信長_6S
西海 コエン『英語で読む 織田信長』

標準的な速度で吹き込まれたCDが付属

 吹き込み音声は全てのトラックで、やや低めの声の男性の発音が収録されています。特に感情を込めていない、淡々とした朗読音声となっています。

織田信長_CD
西海 コエン『英語で読む 織田信長』付属CD(1枚組)

 速度を測定したところ、約150語/分となっていました。TOEICのリスニングパートの速度は150語/分~220語/分なので、TOEICの最低ラインの速度と同程度です。英語学習書の付属CDとしては標準的なスピードなので、リスニングの中級者までなら利用しやすいCDと言えます。

歴史好き・大河ドラマ好きな学習者に最適

 英語学習ではどうしても大量の文章を読むことは避けられません。その中で問題となるのは明らかにレベルが合わない文章を選んで嫌になってしまったり、飽きが来てしまったり、仕事等が忙しくなってしまい時間が取れず続かなくなったりすることです。

 本書では教科書的な記述ではなく、語り部(織田有楽斎)の語りという形式を取ることで信長の人間性や考え方を生き生きと表現するとともに、登場人物の心情や事件の背景もドラマのように記述されているので、飽きが来ることがありません。歴史好きな人や、本格的に活字の歴史小説はあまり読まないがテレビで歴史ドラマをたまに見る人にも面白く一気に読み進めてしまえる一冊です。

 レベルも難しすぎるということはなく、本のサイズもコンパクトで持ち運びしやすいので、通勤・通学中に持ち歩いて読むにも負担になりません。

まとめ

  • 織田信長の生涯をドラマのナレーションのように記述したリーディング教材。
  • 英文は平易、語彙も標準的なもので構成されている。
  • 教科書的な記述ではなく語り口なので面白く読み進めることができる。
  • 歴史好きなら飽きがこない。
●編集長からひとこと
 英語学習はとにかくモチベーションを維持することが大変です。効率を重視した学習書はもちろん重要ですが、『英語で読む織田信長』のように趣味の観点から面白いと感じる学習書もまた必要ですね。私も信長は大好きなので、仕事の合間に読んでみようと思います。
さかえ
上智大学法学部卒のビジネスマン。大学在学中は、純正日本人でありながら帰国子女率80%の上級英語クラスに所属していた。TIME誌、Newsweek誌は辞書なしで読解可能。愛読誌は『The Wall Street Journal』『The Economist』。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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